「パッと見ただけではわからなくて、面白くないけど、後からグイグイくるいい映画です。」小さいおうち Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)
パッと見ただけではわからなくて、面白くないけど、後からグイグイくるいい映画です。
原作は読んでいないし、なんとなく面白くなさそうとは思っていたけど、山田監督の映画なのでハズレはないだろうと思い見にいきました。
地元のシネコンで、平日の夕方だったけれど、観客は、私を入れて二人。
公開した初めの週なのに、これは酷い。
正直、かなり不安でした。
本編が始まり、最後まで見たけれども、あまりパッとしない印象で、ある程度予想どおりの展開、何が言いたいのかわからなかったし、セットもチープで、キャストもいまいち、これはハズしたと思いました。
でも、その後レビュー書こうと思っていろいろ考えていたら、急に面白くなってきた。
この映画は、他の登場人物等はあまり関係がなくて、映画全体でタキさんの気持ちを表現しているような気がする。
タキさんは、山形の実家の家計を助けるため、東京に奉公に出てきた。
最初は違うところで、いろいろ苦労したと思うけれど、次にこの小さいおうちにきた。
この小さいおうちは、タキさんにとっては理想の場所だったのだろう。
もしかしたら、子供のおままごとの道具のようなものだったのかもしれない。
この家の人たちはみんな好きだけれども、特に奥さんが大好きで、理想の人。
恋愛感情に近いものを持っていたと思う。
後から登場してくる、旦那さんの会社の板倉さんも好きだけれども、奥さんの方が好き。
その二人の不倫を知った時、タキさんはものすごく複雑な気持ちだったのだろうと思う。
自分の理想の家族が壊れてしまう不安だったり、奥さんや板倉さんに対する複雑な嫉妬的感情、知ってしまったことを旦那さんに黙っている申し訳なさ・・・。
これらの感情が爆発して、最後にああなってしまったのだろうと思った。
結局、それほど大事にしていた小さいおうちを、戦局の悪化で、出ざるをえなくなり、山形の実家に帰ることになる。
その後、小さいおうちは米軍の無差別爆撃で崩壊、消滅。
板倉さんも戦争で招集された後、どうなったかわからなくなる。
こんなことになるのだったら、あんなことをしなければよかった、本当に申し訳なかったという思いを、戦後、誰にも言えず、ずっと抱えて生きてきたのだろうと思った。
この映画は、タキさんを中心とした世界なのだとすると、パッとしない印象も、ある程度予想どおりの展開も、チープなセットも、いまいちなキャストも納得です。
あたりまえだけど、山田監督の演出が素晴らしかったです。
後から思い出すと、グイグイきます。