「救い救われ生きていく。」潔く柔く きよくやわく ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
救い救われ生きていく。
今作のキャッチフレーズ?にもなっている問いには、
「もちろんできますよ。」と、断言できる。
不幸な過去を抱えてしまった二人にとっては、
それを払拭しながら一生を生きていくのはさぞかし辛い。
でも抱えたまま生きている人間はこの世にゴマンといる。
どんなに辛く悲しい過去も、時はきちんと押し流していく。
そうやって人間が生きていくことを今作は描いている。
気になったのが「罪悪感」という言葉だった。
観ていて、ふと思ったのだ。もしも自分の大切な相手が
不慮の死を遂げた時、まず抱くのは罪悪感なんかじゃなく、
圧倒的な悲しみと絶望のはずである。
だからこの二人が苦しめられてきた罪悪感とは、
「相手の気持ちは分かっていたけど、自分の気持ちはまだ…」
という、ハッキリしない段階でそうなってしまったが故の
「罪悪感」という境地なんだろう。劇中でも赤沢が自分を例に、
「こんなことになるなら、もう少し相手を好きになってやれば
良かった。こうしておけば良かった。なんて思ってるんだろ」
まさにドンピシャ。ハッキリ言ったね、赤沢くん。と思った。
自分の気持ちになんてまだ気付かない、気付いても正直には
なれない世代での出来事。互いに可哀想だと思うが、そこを
乗り越えてこそ、次のステップがある。不幸な事故ではあるが、
彼らは恨み殺されるような罪を抱えている訳じゃない。
赤沢をかばう亡くなった同級生の姉・愛実の人格が素晴らしく、
この人がいて本当に良かった、と心から思った。
愛実に救われた赤沢が、今度はカンナを救おうと尽力する。
私的にはこの二人は付き合うには向いてないかも…と思うが、
(同じ時点で苦しみを共有してしまうので)
誰かに救われた自分が、また誰かを救う。順番は間違ってない。
原作は(試し読みコミックのみ)読んでいない。
物語にやや無理な展開が多く、細部まで描かれていないため、
相関図が分かり辛い部分もあった。
とはいえテーマは一本、筋を通しているので観やすいと思う。
(抱えて生きても大丈夫。幸せになれるよ。あなたは悪くない)