「年を取るのも悪くない」素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
年を取るのも悪くない
何かと評価の分かれる作品です。
・主役は元泥棒の老人で、万引き程度の窃盗は今でもやめられない
・家族の結束をやたらと強調するので、動機がそこに集中している
・世間体を気にする人たちには、認知症の老人を放っておくことは罪で、介護ロボットにまかせきりにしてしまうことも罪悪感を伴う
・介護ロボットが超高性能で、彼に癒しを感じるかそうでないか
・見方を変えれば「被害者」の人たちが敵として描かれている
・全体的に低予算で作られているので、ロボット以外のテクノロジーがチープ
などの、諸々に目をつぶれる人には、とてもおすすめ。
脇役がやたらと豪華です。
スーザン・サランドンは少なめの登場シーンで確実に印象深い演技を見せてくれます。
リブ・タイラーは実在のモデルがいそうなうざい娘役をナチュラルに好演。
ピーター・サースガードのとぼけたロボットぶりは、こんな相棒なら本当に欲しいと思わせてくれるもの、「インターステラー」のTARSは確実にこの映画の影響を受けているでしょう。
さて、本作のテーマは記憶です。
認知症で、記憶を徐々に失っていく老人にとって、何よりもつらいことは「忘れる」ということ。それが映画の随所にパズルのピースのように散りばめられていきます。
長く一緒に過ごしたのに、妻のことを思い出せなかったり、完璧な計画を実行したのに、犯行現場に眼鏡を忘れたり、ロボットに迷彩を施したことを忘れたり。
「要するに人間は”我思う故に我有り”です」ロボットと交わす何気ない会話の中に重たいセリフがサラッと出てきます。
「あなたの健康を維持できないと私は不良品としてメモリーを消去されてしまいます。」こう言われてロボットに同情し、嫌いな食事を食べるようになる老人は、何よりも記憶を消されることが恐怖なのです。
「私は生きていません。メモリーを消去されても平気です。」こんな重たいセリフをロボットにサラッと言わせる演出にすっかりしびれてしまいました。
そしてやむなくロボットのメモリーを消去するときの仕草は、別れのハグそのもの。思わず泣いてしまいました。血の通わないロボットなのに。
でも、確実に、そう遠くない将来に、こんな未来が待っているのでしょう。
