「暗くて重い復讐譚の中に見える母と息子の愛」嘆きのピエタ mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
暗くて重い復讐譚の中に見える母と息子の愛
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した韓国のキム・ギドク監督の作品。
バイオレンスや復讐はどちらかといえば苦手な方なのに、最近、韓国のそちら系に走ってしまっています。
天涯孤独で母親というものを知らないまま生きてきた、冷徹な取り立て屋のガンドの前に、母親と名乗る女性(ミソン)が現れて、家に入ってきて、いきなり台所にたまった皿を洗い出すのです。不信に思ったガンドは何度も女を追い出そうとするのですが、女は何度もガンドに謝り、たびたび涙を流すのです。でも何だか怪しすぎる。しかし、母を知らないガンドは女を慕うようになり、女(母親)に首ったけになってしまいます。
ガンドを抱きしめ、よしよしもするのですが、ガンドの夢精を手伝って、手を汚し、顔をしかめて、水で洗い流すシーンから、「本当の母親じゃないんだ」とわかります。
この作品の「復讐」は、屈折しているというか、手が込んでいるものでした。
母性愛を知らない男に
母の愛を植え付けて
愛を失わせることで
悲しみのどん底に突き落とす
衝撃の事実を男が知る
そして贖罪として男は・・・
復讐のためにガンドに近づいた女もガンドを憐れみ、慈悲のような気持ちが芽生えていました。凄まじい映画なのに、優しさも残っていて、気持ちが和らぎました。
女と一緒に植えた松の木の下に、母の亡骸を埋めようとしたときに、ガンドは事実を知るわけですが、女の息子が着ていたセーターを自分が着て、3人並んで横たわっているシーンが、不気味なのに美しく見えました。
多少、笑えるところもありました。
女が置いていった、うなぎにタグのようなものがついていて、そこに女の名前と電話番号が書いてあったり。笑えるシーンかどうかはわかりませんが、ガンドが女の股間に手を突っ込み、「俺はここから産まれたのか?」と叫び、「ここにまた戻してくれ〜」ということころ。母と息子なのに、ここで、2人は結ばれたのか・・・? 背徳的なにおいもしました。
仕事の合間、寝不足の時に観たのですが、ある意味、魂を揺さぶられました。