「期待しすぎた」ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
期待しすぎた
面白かったけど、もっと笑いたかったし、もっと興奮したかった。アクションにスリルが足りなかったのと、登場人物がみんな負け犬と言っている割に勇敢だし命知らずだし、能力も高くて負け犬感が全くなかった。
前作のキモい中年が狂った女の子とヤクザに殴り込みをする、といった映画の方が断然グッとくる。
敵も何がしたいのかさっぱり分からない。惑星を滅ぼすほどの力があったらもう何もしなくてよさそうなものなのに、なんの権限もなさそうな市民の前で演説をするのも変だし、精神がしょぼい感じがした。圧倒的な力を手に入れてその先何がしたいのかとても気になるのだが、何のプランも感じられなかった。
『フットルース』はケニーロギンスの主題歌にはとても馴染みがあるのだが、映画本編は見ておらず主人公が歌う方の曲は分からなかった。ケビン・ベーコンも『インビジブル』などの印象の方が強い。
そういうわけでいろいろ楽しめないポイントがあった。
しかし、それは期待値が異常に高かったせいもあり、映画としての作りはとても丁寧で楽しい映画だった。特に木の人、すごくナイスガイで強くてエコでよかった。ヒロインが全然かわいくなく、怖くて気持ち悪いところも宇宙的な尺度を感じさせて潔くてよかった。主人公もタフで勇敢で情に厚く魅力的だった。アライグマもよかった。
しかしもっと本格的なクズが宇宙をまたに掛けて活躍して欲しい。
(追記)
こんなに評判のいい映画を心置きなく楽しめないのは悲しすぎるのでサントラを聴いて、映画秘宝の特集を読んで改めて見てきた。
敵が暗くいじけた人物にしか見えず、どうにも心から憎むことができず、どちらかというと気の毒に思えて仕方がない。
オーブなどという圧倒的なものがあったら世界のバランスを崩してしまい、大味になってしまう。そんなものを奪い合う物語もあまり面白いと思えない。
主人公チームが惑星を守るために活躍するのもなんとも違和感がある。ルパン三世みたいな利己的な連中なんじゃなかったのか。自分と惑星の利害が一致するなどの動機づけが欲しかった。特にアライグマはそんな行動をしないタイプでいて欲しかった。
クライマックスのアクションもそれほどスリリングではなく、若干ウトウトしてしまった。
音楽も含めた雰囲気は最高だった。
登場人物はとても魅力的で、特に主人公は気持ちのいい人物で、アライグマのひねくれた感じや、グルードの頼りがいがありつつピュアなところなど、心から好きだと言えるのだが、お話が面白くない。作者の構成した物語に登場人物を無理矢理押し込んでいる感じがする。
100%好きになれたら最高なのに、好きでない部分が強くあり過ぎてつらい。
(追記)
第3作の公開に際して、1作目から見返していると、保育園の娘が部屋に来たので吹き替えに切り替えた。すると、なんだかすごく楽しい。字幕のせいで入り込めていなかったのかもしれない。登場人物も全員好きになってきて、3回目だからかもしれないがストーリーも別に文句がない。子どもも楽しそうに見ていた。構えすぎていたのかもしれない。吹き替えで、適当な気持ちで見ていたらもっと楽しむことができたのかもしれない。
サノスが『エンドゲーム』などでは宇宙一の大敵となるのだけどこの時点ではそれほどの大物感がない。ネビュラのひどいお父さんの印象だ。