「音楽の力は偉大なり」ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー クリッターさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽の力は偉大なり
マーベル・シネマティック・ユニバース第10作目にしてガーディアンズ・オブ・ギャラクシー1作目。
アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.の口から「マーベル史上最高作」と言わしめた本作は、さしずめマーベル版スター・ウォーズと言った所か。
原作がアメリカでもマイナーな作品だったらしく、映画化が決まってもあまり期待されていなかったようだが、相も変わらず魅力的なキャラクター達とスター・ウォーズな世界観、70年代から80年代までの懐メロを多用して観客の心を鷲掴みにし大ヒットを記録、原作コミックの売り上げまで伸ばすという、全米で予想外のガーディアンズ旋風を巻き起こしてしまったのが本作である。
なので日本公開前から評判が凄く高かったのもあってか、かなり期待していた。
簡潔に言うと、十分に楽しめたんだけど、やはり周りの声に踊らされてやたらに期待値を高めるのはやめようと思ったってのが正直な感想。
自身が本作に感じた最大の魅力、それはガーディアンズのメンバー5人のキャラクター性や彼らが織り成すストーリー性ではなく、部分的ではあるが監督のジェームズ・ガンのセンスの良さ、VFXの完成度、そして何より懐メロのベストマッチ具合だ。
70年代から80年代にかけての懐メロは自分のような若い世代でも、心を掴む曲ばかり。
この映画を観てからというもの、予告で流れたBlue Swedeのウガチャカこと「Hooked on a Feeling」はもちろん、 序盤で流れるRedboneの「Come And Get Your Love」をすっかり気に入ってしまい、プライベートでダウンロードして暇さえあれば聴いてしまうほど、最高にイカした曲だった。
劇中で、ノリノリだったスター・ロード大先生みたいについつい踊りたくなってしまうくらい、ポップで素晴らしい曲だ。(実際に外でノリノリで踊ってたらさすがにヤバいやつ扱いされるのであんなことはしないけどw)
これらの曲がなかったら、きっとこの映画の魅力は半減してただろう。
それほどまでに懐メロたちがこの映画の一本柱になって支えていると言える。
VFXも素晴らしい出来映えで、今改めて見返すと、この映画の後(1年後)に出た、ディズニー傘下になって明らかに映像のパワーが落ちた本家スター・ウォーズよりもスター・ウォーズしちゃってて、思わず笑ってしまった。(同じディズニー傘下でどうしてここまで違うのか甚だ疑問)
こういう革新的で創造性豊かな映像こそ、SF物には必要不可欠なのだ。
個人的にはこんな映像を求めてた。
満腹である。
監督に抜擢されたジェームズ・ガンはMCUの歴代監督達の中でもセンスがずば抜けており、冒頭で少年クイルがラヴェジャーズに連れ去られるシーンの最中にマーベル・スタジオのファンファーレを挟むという、一連の流れを観た時、「この監督はできる」と確信した。
それだけではなく、序盤でウォークマンを手に取り、「Come And Get Your Love」が流れ、スター・ロードがノリノリで踊り出すと同時に、タイトルがドン!と出るタイミングも絶妙。
軽快にダンスをし、小さい獣を捕まえてマイク代わりにして歌い出すというあのシークエンスは下手なPVよりセンスがある。
マーベルは本当に素晴らしい逸材を発掘するなぁとつくづく感心してしまう。
キャラクターに関しては、メインのガーディアンズのメンバー5人よりもラヴェジャーズのリーダーであるヨンドゥ・ウドンタに強く惹かれた。
クイルとヨンドゥはさしずめ家出したどら息子を怒鳴りつける頑固親父のような関係に見えるけど、口では散々罵倒しながらも憎みきれないのか、クイルを息子同然のように接し、最後には必殺ヨンドゥ・スマイルですべて許すという父性や人情味溢れるキャラが凄くよかった。
戦闘スタイルも、ヤカの矢を口笛で華麗に操作して、敵を瞬殺、矢をパシッと受け止めるという独自だけど最高にクールな戦い方が個人的にグッと来た。(あんなチートアイテムかわせるのMCUじゃクイックシルバーくらいだろうなw)
本作はMCUでも特に独立性の高い一本だが、アベンジャーズとのリンクネタも少なからずちゃんとあるのも忘れちゃいけない。
サノスに関することや、アベンジャーズ1作目にちょろっと出てきて、本作で悪役のロナンに瞬殺されたサノスの側近であるジ・アザー、インフィニティ・ストーンの1つであるオーブ(パワーストーン)、「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」にも出たコレクターや、彼が所有するコレクションの1つにダークエルフの雑兵が展示されてたりと細かいリンクネタの散りばめ方は相変わらずうまい。
映画館で観た時は、期待値を高くし過ぎてほんの少しだけ肩透かしを喰らったが、何度か見返すと旨味がどんどん出てくる、そんな映画だった。
やっぱりMCUに外れはないし、世代を問わない音楽の力は偉大だな。
追記
一昔前の単独作が黒歴史扱いされたあのアヒル野郎が帰ってくるなんて誰が思っただろうか…。