「子供向け映画としては良作」アーロと少年 hijiki1994さんの映画レビュー(感想・評価)
子供向け映画としては良作
取りあえずこの映画の良い所、う~ん?な所を順々に挙げていこうじゃないの。
【ここが良い!】
●風景の描写がキレイ!
これ、実写か?となるシーンの連続。特に水の描写は目を見張るものがある。終盤の見どころの一つでもあるアーロが川に流されていくスポットを救出するシーンにグッとくるのもCGアニメの大御所であるピクサー、さすがの描写力としか言いようがない。
●少年、スポットがかわいい!
この世界はどうやら恐竜だけしか喋れんようでスポットも当然、喋らない。スタッフは彼の感情を表情だけで伝えようと頑張ったことだろうと思う。彼の無垢な表情に母性をくすぐられる人も多いのでは…?
●悪役のワルさが光る
道中、スポットを狙おうとするプテラノドン集団。最初会った時には道に迷ったアーロ達を助けてくれるのか、と思いきやの強襲シーン。ワルはワルでも怖いワルだ。食い殺しちまうぞ!ってオーラが最高。中々キャラも立っていたし、一度は別の恐竜に追い払われたのにラストで再び襲ってくるとは思わなかった。
【うーん?】
●語れらなさ過ぎなストーリー
物語が進むにはある程度の「理由づけ」が必要だ。桃太郎が鬼退治に行くのは「鬼が悪さをしている」という理由があるからであってそれもなしに「よし、鬼退治に行くぞ!」って言う桃太郎はただの鬼畜ではないか?
…それはさておいてこの映画ではそんな「理由づけ」なしに物語が進んでしまう。どうしてスポットはアーロを助けようとしたのか?どうして1度は同じ種族の元へ行こうとするスポットを引きとめたアーロが数十分後には感動的なシーンと共に別の家族の元に預けてしまうのか?
前者ではエピソード0である程度の推理は付いた(スポットはアーロの姿に1人ぼっちになりたてだった過去の自分を重ね合わせたのだろう)が劇場に行く人が全員あれを見て来るわけではない(自分もエピソード0の存在なんか知らなかったぞ)別にもったいぶらずに本編に組み込んでも良かった話と思うのだが…
後者では数々の困難に一緒に立ち向かい、一緒に帰ろうとも言っていたアーロがノコギリ山を越え、やっと家が見えた!って所で脈絡もなく現れた、しかもスポットとは明らかに初対面の別の家族(髪の色と服が違うんだよなぁ)にスポットを預けてしまう。
家族というものは大切な物なんだよ、ってのは分かるが…いやでも「別の」家族だぜ?友情<初対面の同族っていうのが腑に落ちない。その決断をしたのにはもっと深い理由があるんだろう?アーロ?…だから喋れって!!まだ実は死んでたと思われてたスポットの家族が生きていて再会…の方がよっぽどスッキリする。ベタだけど。
●薄い登場人物
アーロには兄と姉がいるのだが、兄はドジなアーロをからかったりなどちょっとは主人公との絡みがあるが姉はない、一切ない。
全く姉の存在意義が分からなかったぞ。姉はすばしっこく、兄はいたずら好きとかいうキャラがあるのにその姉のキャラが全く生かされていない。
また、名前の無かったスポットに名前を付けるシーンだけで1キャラ必要だっただろうか?見た目的にもキャラが立っていたのに…もっとストーリーにも絡んで欲しかったなぁ…とも思った。
●ディズニーの伝統芸?ぶっ飛びシーン
古くからはダンボから始まるディズニーの伝統芸?とも言えるサイケシーン。あのピンクの象に恐怖を抱いた人は多いと思う。
別に本編の流れとは脈絡もなく始まるぶっ飛びシーンがこの映画にも存在する。「超美麗3Dアニメ」でだ。
えー、もしも子供にトラウマを残したくない親御さん方。彼らが腐った桃を食べるシーンになったら構わない。子供の目を塞いでよし。リアルを追及した作画でアレをやられるのは恐怖しかない。俺が6歳児ならちびってたぞ。別にピクサーは子会社になったからと言って親会社の伝統受け継がんでよし。テレビ放映の時にはあのシーンを流すのはテロ行為なので放送局の皆々様におかれましてはバカな真似を慎むようお願いいたします。
あっ、そういうサイケなシーンが大好きな人!この1分にも満たないシーンだけで映画代金払える価値はあるぞ。俺が保証する。
【総評】
この映画は親子向けの王道だと思う。自然の雄大さをアニメ映画で体感するとは思わなかった。今のアニメ映画は草の一本一本、小さな虫たち、水面に輝く日光…ここまで魅せることができるんだぞ!という制作陣のこだわりがよく分かる。また無邪気な表情を見せるスポット、旅の途中で成長し、物おじしない心強い恐竜になっていくアーロ。登場人物に感情移入すればシーンの一つ一つで泣いてしまう。
色々ストーリーで無茶苦茶は言っているが、それは自分が中途半端に年取って理屈くさくなっただけかもしれない。複雑なストーリーの苦手な子供にちょうどいい。確かにストーリーには粗がある。凡庸だ。それはそうだが、やはり美麗な映像から紡ぎだされる感動に心を温かくして観てほしい。細かなことは考えずに、ね。
でもそう思っちゃうとあのぶっ飛びシーンがしこりのように心に残ってしまう。幸い、中盤に存在するのでさっさと忘れてしまった方が吉ですな。ウン アノシーンハ ナカッタ(棒読み)