劇場公開日 2014年3月21日

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「産みの苦しみと父と娘の絆の物語に思わず号泣した」ウォルト・ディズニーの約束 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0産みの苦しみと父と娘の絆の物語に思わず号泣した

2014年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

この作品はあのウォルト・ディズニーが、映画「メリーポピンズ」を制作するに当たり、数々の困難を乗り越えてやっとの思いで、ディズニーが実の子供達と交わした子供の愛読書である「メリーポピンズ」の映画化と言う約束を果たす迄の裏話と言う展開だ。

簡単に言ってみれば単なる制作裏話的な、制作秘話をお披露目したような印象を持ちかねないこの映画の邦題であり、映画作品なのだが、その実態はそんな裏話というものではない。
この「メリーポピンズ」の原作者であるパメラ・トラバース自身の幼少時代の自分と父との家族の絆を描いた。心温まる愛情物語だ。

幼い少女であるパメラにとっては、父親バンクスは生きる夢と希望であり、自信を持たせてくれる彼女の中では完璧な存在であったが、そんな父は、理想と現実の狭間で苦しみ酒に救いを求め、酒浸りになり、挙句病床に伏し、遂には病死してしまう。
そんな父への想いを、父との夢に楽しい思い出を童話「メリーポピンズ」として執筆した彼女は、映画化に因って父と自分の思い出が汚される事を恐れ、ことごとくディズニーの製作方針に反対をし続ける。
そんな気難しい、パメラを名優エマ・トンプソンが見事に演じている。この作品は恐らく彼女無しでは存在しない。もしもパメラを他の俳優が演じていたら、ここまで素晴らしい映画には成り得なかっただろうと思う。
そしてこの作品のもう一つの見所は、イギリスからハリウッドへやって来たパメラの宿泊先のホテルから、彼女を毎日毎日仕事場である撮影所まで送迎するお抱え運転手のラルフとの友情物語としても素晴らしい作品であったと思う。
もしも、このラルフにパメラが出会っていなければ、遂に映画化する事は無かっただろうとも思うのだ。
ここに人の運命と出会いの不思議な縁と言う存在を感じずにはいられない!
この運転手をあの演技派俳優のポール・ジアマッティが見事な芝居を見せてくれるのだが、この2人を観ているとまるで、あの名作「ドライビング・ミステージー」を思い出さずにはいられない。完全に主役のトム・ハンクスは脇役である。

しかし、小説も映画もそうであるけれど、作品を世に送り出すと言う事はその作品自体よりも壮大なドラマが、作り手の中には存在すると言う事を見事に教えてくれる作品だった。
産みの苦しみと言うものは総ての物に付随する影のようなものなのだろう。しかし、その影がおおきければ大きい程、その作品が実現した時は喜びも大きい筈である。
エンディングクレジットの最期で実在のパメラ自身の声が流れるので最後迄じっくりと作品を味わう事をお薦めしたい作品でした。;

ryuu topiann