劇場公開日 2013年12月7日

  • 予告編を見る

「侘び茶を巡る、胸焦がす歴史ミステリー!」利休にたずねよ ソーヤさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0侘び茶を巡る、胸焦がす歴史ミステリー!

2013年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

知的

千利休の目ざした「侘び茶の境地」には、彼の妻さえも知りえなかった痛切な「原点」があった・・・
そんな歴史ミステリーは、ローランド・エメリッヒ監督作品『もうひとりのシェイクスピア』やオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の『ダイアナ』などを思い起こさせます。

この世ではもはや手に入れることの叶わぬモノ。見果てぬ美。それでも命を賭して探求せずにはおられぬ利休の姿を、市川海老蔵は、抑制された「静」とパッショネイトな「動」とを巧みに演じ分けながら見せてくれます。また、その時代背景も、ある時はひたすら豪奢に、またある時には実に渋い映像美で再現され、私の目を存分に楽しませてくれました。

一個人の見果てぬ夢の追求がやがて「茶は剣に勝る」といった政治性を帯びていってしまう経緯や、劇中ナレーションもしている妻・宗恩の心理などは描き込みが足りず、やや不満も残りますが、利休の過去を巡るミステリーの面白さはそれを補って余りあります。

本作を観終わって、『利休』(勅使河原宏監督)、『千利休 本覺坊遺文』(熊井啓監督)もぜひ見たくなりました。
あ、それから、桂米朝師匠が演ずる上方落語『天狗裁き』も併せて見たい。妻や秀吉ら利休を取り巻く人々の心理をより深く理解する意味で、ね(笑)。

ソーヤ