「圧倒的すごい映画」セデック・バレ 第一部 太陽旗 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的すごい映画
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日本が悪者で韓国の『グッド・バッド・ウィアード』みたいな描かれ方だったら嫌だなと思って見ていたら、決してそのような一面的な描かれ方じゃなくて安心した。首狩り族は非常に残虐で、命がそもそもそれほど重要視されていない常識で生きているかのような描写だった。しかし、自然とともに生きるというのはそういうものだと言わんばかりの圧倒的な自然と、特に主人公モーナの圧倒的な躍動感だった。血の気が多すぎ、血潮が熱すぎてすぐ他の部族を敵視するのも大自然のど真ん中で生きていく、野生の人間としては当然なのだろう。
そういった描写一つ一つが現代とはまったく違う常識で、それを自然としてフェアな目線で描いているのが素晴らしい。現代目線のバイアスを細心の注意を払って排除しようという試みが感じられた。歌がやたらと長いのも、歴史資料としての価値を高めていると思った。
ただしかし、首狩り族を相手に横柄な態度をとるとは、当時の日本人の中には精神の弱い人間もいたことだろうが、あまりにうかつすぎる。
蜂起した際は、てっきり女子供は殺すなという命令が下るのかと思ったら、まるで無差別に大量殺戮が行われたのも驚いた。
モーナが若者時代も超苦手なタイプで、一緒にいたらオレはすぐパシリにされるし、おじさんになってからのモーナも威厳と威圧感がありすぎで、怖い。変な事を言ったらすぐ怒鳴られたりフルボッコにされそうで、息子も大変そうだった。しかし、あんな絵になる男もそうおらず、遠くから双眼鏡で観察していたいタイプだった。
さらに悲惨な展開が予想される第2部も楽しみだ。
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