「夢を追うことの辛さ苦しさを優しく見つめた傑作」ばしゃ馬さんとビッグマウス 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
夢を追うことの辛さ苦しさを優しく見つめた傑作
𠮷田恵輔作品で一番好きな映画を選ぶなら、迷わずこの作品を挙げる。映画監督になりたいという夢を叶えてしまった𠮷田監督が、下積み時代に溜め込んだルサンチマンを最も美しい形で(同時に辛辣に)昇華させたような作品だと思う。
夢を追うということは、往々にして限られたポジションを奪い合うことであり、誰かが勝ち残ると、その影にははるかに大勢の勝ち残れずに去っていった人たちがいる。その分かれ目になるのは実力なのか、努力なのか、それともただの運なのか? 現実のどうしようもない過酷さ残酷さを、人生のあるべき姿として受け止める。そんなやるせない諦念のようなものを、どんな映画よりも切実に、優しく見つめているのではないか。
がんばれば夢は叶うよ!みたいなメッセージが、とんでもない嘘っぱちのキレイゴトにしか思えない時期や局面は絶対ある。そういう人たちのために𠮷田監督は映画を作っているのだと思える、圧倒的に信頼に足る大傑作。
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