ばしゃ馬さんとビッグマウスのレビュー・感想・評価
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「さんかく」の恐怖、ふたたび
日本映画界で今もっとも興味のある監督は誰か、と聞かれると、今は吉田恵輔監督、と答える。
「純喫茶磯辺」で宮迫さん、仲さん、麻生さんそれぞれに感情移入させるキャラクターつくり(プラス近藤春菜さん)、「さんかく」でも高岡さん、小野さん、田畑さんもそれぞれキッツいキャラだが、登場人物それぞれみんなイタイけど、同時にこっちの身をつまされる思いを楽しく、でも容赦なくさせてくれた。
「純喫茶磯辺」「さんかく」
この人の映画を見ると、猛烈に傷つく危険がある。
面白い、と人に言われてうっかり見てしまうと、立ち直れない可能性がある。この人の場合は確信犯だ。
本作もやはり取扱い注意。吉田監督のキャラクター作りは健在。
関ジャニさんがでようが、イタイキャラを笑わせつつも、同時にこっちにも容赦なくイタイ思いをさせる。麻生さんの役は言わずもがな。
共感したくない部分が実は自分にもある、ある、と思わされる恐怖はそれは、もうたまらない。
でも主人公2人の落としどころはうまく決まったと思う。
以下不満点
老人ホームのところだけが、ちょっと毛色が異なる。もちろん脚本のため、「物語」を書こうとする主人公とそこで働く元カレとの温度差は必要だとは思うのだが。
また、関ジャニさんの演技がちょっと一本調子なところ。初めはいいんだが、いつまでもチャラいまんま、という印象はある。
確かにラストはそういう解釈でもいけそうな気もするが。
俺は男で、もう夢とかどうとかの年齢ではないので、そんなにキッツイとは思わなかったが、性別、世代によってはかなりやばい映画であるのは間違いない。
追記1
本作、先の2作よりも情報量がすごい。
常に背景に人がいて、常に何かしているのである。居酒屋のシーン、喫茶店のシーン、シナリオスクールの教室、廊下。
本筋も面白く、軽快に、かつ重く展開していくのだが、その背景の人物がちょっとおもろいことをするもんだから、メインの会話に全然集中できなくて、他の観客とは違ったとこで大笑いしてしまったりで、ズルいよ、これ。「あ、そこでカドにぶつかって」とか「あ、枝豆だけ食ってて」とか、撮影裏話もそうとう面白いことだろう。
追記2
元カレに愚痴を言って慰めてもらうシーンの展開は誰もが予想できてニヤニヤして見てたら、スコーンと怖い一言を主人公が言ったり、関ジャニさんのギャグが実はギャグじゃなかったりと、とても計算されてる。
間髪入れずに吉田監督の新作公開のようで、楽しみである。
夢を追うことの辛さ苦しさを優しく見つめた傑作
𠮷田恵輔作品で一番好きな映画を選ぶなら、迷わずこの作品を挙げる。映画監督になりたいという夢を叶えてしまった𠮷田監督が、下積み時代に溜め込んだルサンチマンを最も美しい形で(同時に辛辣に)昇華させたような作品だと思う。
夢を追うということは、往々にして限られたポジションを奪い合うことであり、誰かが勝ち残ると、その影にははるかに大勢の勝ち残れずに去っていった人たちがいる。その分かれ目になるのは実力なのか、努力なのか、それともただの運なのか? 現実のどうしようもない過酷さ残酷さを、人生のあるべき姿として受け止める。そんなやるせない諦念のようなものを、どんな映画よりも切実に、優しく見つめているのではないか。
がんばれば夢は叶うよ!みたいなメッセージが、とんでもない嘘っぱちのキレイゴトにしか思えない時期や局面は絶対ある。そういう人たちのために𠮷田監督は映画を作っているのだと思える、圧倒的に信頼に足る大傑作。
夢を持てることの素晴らしさ。 しかし、夢を叶えることの難しさ。 さ...
シナリオ学校を舞台に脚本家を目指す、ばしゃ馬のように夢を追いかけて...
吉田恵輔にハズレ外れ無し。
リアルな凡人
ジーンときました
逆に… [長文 ネタバレあり注意!]
夢を自力で諦められなかったので、ネットで紹介されていたこの映画を観ました。
主演の麻生久美子演じるみち代と私は奇しくも同じ34歳。脚本を書いてもないのに、すごいもの書けると根拠のない自信を持つ関ジャニ∞安田演じる天童。
作品を観ていてとにかくこの天童の言動が腹立ちます。ストーリー展開が現実とギャップがありすぎて疑問を抱くことが多く、結果私は夢を諦めるどころか、逆に諦めれなくなってしまいました。正直よくこれで映画になったなと思います。
タイトルにばしゃ馬とありますが、みち代はひたむきではありますが、ばしゃ馬のようながむしゃら感を感じません。最後の脚本が自分自身のことなんて、ただでさえ面白くない日々を脚本にして誰が楽しめるのでしょうか?
登場人物に喋らせたいセリフがあってそれを元に話が作り上げられているように感じました。例えばみち代が元カレに泣きついて「抱いちゃった夢ってどうやって終わりにしたらいいか分からないんだもん」や「夢を諦めるのってこんなに難しいの?」また、みち代と天童両者ともに口走る「シナリオの参考に聞きたいんだけどもしも私が~(俺が)どうする?」とか。わざとらしく感じます。
現実世界はみち代のように“救い”なんて用意されてないです。みち代のように実家が旅館で帰る場所があって、未だに元カレに頼れたり、夢に付き合ってくれる友達がいて、好いてくれる年下の可愛い男の子がいる、そんなこと無いです。現実の30半ばの夢追い女を取り囲むものなんて、孤独と焦燥と虚しさと惨めさと恥ずかしさだけです。事実は小説より“苦”なりです。
ただ一つ救いだったのは、ビッグマウス天童が書いた作品がコンクールに落選したこと。いくら物語とはいえ、ろくに脚本書いてない人が通過、受賞していたら本当に興ざめでした。
この作品の最大の見所は麻生久美子の可愛い眼鏡姿です。
痛々しい、苦々しい人生模様でしたが、どこか優しさも感じられる作風が心に沁みました
夢は一体いつ諦めればいいのか・・・。
小さい頃からそれほど大きな夢を抱いて生きてきた訳ではないので、物凄く心に刺さったと言うほどではないのですが、見せ方や役者の演技がホント素晴らしかったので、いつの間にか話にグイッと引き込まれ、いつの間にか思いっ切り共感している自分がそこにいました。
現実を知るまでは、きっと自分は出来る側の人間だと思い込んでいた節が自分にも若干あったりはしましたので、ビッグマウス君の痛々しい言動もどこか分かる気がしたし、現実を知ってからのばしゃ馬さんの諦めきれずしがみ付く様子もどこか分かるような気がしたし、まあとにかく痛々しい、苦々しい現実を描いた内容に、見ていてとても胸が苦しくなった作品でしたね。
考えてみれば夢が叶う人間なんてほんの一握り、そんなに夢が叶う人ばかりいたらそれはもはや夢として抱けませんから、当然その何千何万倍もの夢破れた人が存在するのは間違いない事実。
でも夢って一体どうやって、どの段階で諦めればいいのか、そのタイミングって結構難しいものだなとしみじみ・・・。
諦めなければいつか夢は叶う、努力はきっと報われる、そんなどこかのアイドルが言いそうな言葉も、現実と言う壁の前には非情にも跳ね返されるのが世の常と言うもので・・・劇中そこでもがき苦しむ様子がとにかく痛々しく描かれていたので、見ていて本当に辛くなってしまいました。
また麻生久美子の演技がとにかく秀逸でしたので、余計に感情移入させられました、まさしくばしゃ馬さんの呼び名にふさわしいばしゃ馬っぷりが、ホント痛々しくて泣けてきた・・・。
ただ、現実を知り挫折を味わってからの身の施し方には少しホッとさせられましたかね。
でもあくまで現実路線、単純にハッピーな方向には持っていかないところなんかは、一貫性があった気がして、清々しい気分にはなれないけど、こう言う映画もありだな、作品としてはいい作品だったなと素直に思えました。
人生と言うシナリオはこんなもんだ、でも人はまた小さな「目標」を見つけて生きていく、挫折があるから人は成長できるのかな、そして人の数だけシナリオは存在する・・・ってことでしょうかね。
しかしまあ各人のキャラ設定がホント秀逸な映画でした。
ビッグマウス君と言い、みち代の友人マツキヨさん言い、みち代の元カレ松尾君と言い(麻生久美子の胸揉めてちょっと羨ましい)、皆強さと弱さを持ち合わせていて、人間臭くて良かった、彼らが醸し出す人生劇場に思わず見入ってしまいましたよ。
それと関ジャニ安田の演技に最初はちょっと不安要素を抱きましたが、あのむかつき加減は終わってみればこれはこれとしてリアルで良かったかも、ビッグマウス君はこの先どうなるのかなぁ~。
まあ何にしても、現実を知った大人だからこそ分かる部分もあったりして、大いに共感できた映画でした。
てゆうかさー
面白かった
痛いけど、晴れ晴れとしていく主人公のみち代の姿が良かった。特に俳優を諦めた元カレが介護の仕事にやりがいがあると強がって言っていて、未練が残っているというセリフにぐっときた。
とても好きなタイプの映画
自分には才能がないことに気づきながらも、夢に向かってがむしゃらにつっぱしる、ばしゃ馬さん。
自分の才能のなさと向き合うのが怖くて、やればできると豪語しながらも一向にシナリオを書こうとしない、ビッグマウス。
二人の気持ち、
特に、ばしゃ馬さんの気持ちがイタイほどよくわかり、観ていてつらくなる。
自分のことは自分が一番よくわかっているんだけど、
ほんの一握りの可能性にしがみついて、
まだいけるって思いたいんだよね。
自分の負け、というか、才能のなさを認めたくないんだよね。めっちゃわかる。
夢は、全員が叶えられるわけじゃない。
夢を叶えられる側と、叶えられない側の人間がいる。
夢を諦めることって、ほんと難しい。
ある意味、夢を見続けることよりも難しいのかもしれない。
私はこの映画を観て、心からそう思った。
たぶん、20代前半にこの映画を観ていたら、感じることは全く違っていたと思う。観る視点が、みち代目線じゃなくて、義美目線になってただろうっていうのかな。
28歳という、今のこの時期に、この映画に出逢えてよかった。
自分自身のこと、一歩引いて考えたいと思う。
大好きな映画です。
大好きな映画です。
映画館で観た後、レンタル20回以上して、ついに最近DVDを買いましたので、レビューします。
ストーリーの進み方、監督、キャストのチョイス、ロケ地などすべて自分の好きなテイストです。
何度観ても、また観たくなります。
夢を諦める事はかなりしんどい事…。
でも、ひとつ終わらせる事ができたら、ひとつ大事なものを手放せば、必ず新しい事が始まるって、すごくよく分かった。
終わりにするのは、怖いけど、その先にはいいか悪いかは自分次第だけど、必ず新しい事が用意されてんだなって、何度観ても、勇気をもらいます。
個人的には、大好きな麻生さんと安田さんのもどかしい関係が、すごく好きです。
うーん…
クリエイトしているすべての人に捧ぐ
ばしゃ馬こと馬淵とビッグマウスの天童。この二人は起こす行動に違いはあれど基本的に精神構造は近い。両方に共通するのは誇大な自己愛でそれはクリエイトをしたことがある人間なら誰しもが抱えることだと思う。自分は「天才なのではないか・他の人とは違う」と思っているのは天童だけでなく馬淵も同じである。馬淵の場合は誇大な妄想が何度も打ち砕かれても結局やめられないのは自分がいつか賞を取ることが出来るとおもっているからだ。馬淵の書く作品はどれも現実感がない夢の中の世界のような作品が多いのもその夢を信じてやまない馬淵だからこそであろう。馬淵は賞を取るために色々なものを利用する。監督であったり元恋人であったり。特に元恋人はそういう自分の夢のためにエゴイスティックな馬淵だからこそ好きになったのだろうし手助けしたいと思ったのだろう。2人の共依存関係は生生しい、だけれどすごくリアルに感じた。
全体的に満足できたが一か所CMがネタバレになりすぎているのがマイナスかなと思った。
夢を諦めるのって、こんなに難しいの?
映画「ばしゃ馬さんとビッグマウス」(吉田恵輔監督)から。
学生時代の夢を追い続けるのが悪いわけではない。
けれど、現実と向き合い、諦めた人は数多いはず。
だから、コンクールに応募して落選し続けても書き続け、
「ばしゃ馬」と言われながらも脚本家を目指している、
主人公、馬淵みち代さん(34歳)がなぜか眩しかった。
彼女が、元彼に泣きながら訴える台詞が気になった。
「抱いちゃった夢って、どうやって終わりにしていいのか、
わかんないんだもの・・(涙)」
さらにこう言う。「夢をさ、叶えるのってすごい難しいのは、
最初から判ってたけどさ、夢を諦めるのってこんなに難しいの?」
「でも、まだ諦められないから、頑張るの・・」と続く台詞は、
言葉では「夢はきっと叶う」と言いながら、意外と簡単に
夢を諦めてしまった私たちの心に響いた。
頭では「叶わない夢はあきらめた方がいい」と判っていても、
「やっぱり、諦められない」という彼女の生き方に、
ちょっぴり羨ましくもあり、応援したくなった。
どんな生き方が正しいなんて、誰にもわからない。
自分が納得するまで、追い続けるのもいいんじゃないかな。
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