「(前作同様)ちぐはぐな作品」探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 メンチ勝之進さんの映画レビュー(感想・評価)
(前作同様)ちぐはぐな作品
日テレ+ユニオン映画的というか、昭和五十年代ころに流行ったもじゃもじゃ頭の二枚目半探偵が主人公のコミカルなハードボイルド映画の二作目で、本作ではこれも昭和五十年代的な、角川アイドル映画のテイストも加味されている。
ただ、曲者感のあるキャストを揃えていて、それぞれキャラクターは魅力的なのに(こんな筒井真理子は初めて観た!)、それぞれ少しずつ物足りない。渡部篤郎にしても近藤公園にしても、もう少し伏線をはっておけば厚みが増すのにね。
矢島健一が演じた野球男にしても非常に面白いキャラクターだが、その面白さがシーン単発に終わってしまい、設定上の必然がなんら感じられないのは残念。
最大の問題は、この作品のリアリティの水準がめちゃくちゃだということである。
本作における主人公の動機、物語を推進するパワーはゴリ演ずるマサコちゃんの死である。その死に悲憤するからこそ大泉洋は事件の真相を明らかにしようとする。
つまり、この作品はキャラクターの死というものが観客にとっても重大に感じられるような、そんな作品でなければならない。RPG みたいに死んでも教会で復活できるような世界観だったら物語が成り立たないのである。
ところが、一方でこの作品は生き死にに関する表現が軽い。
たとえば前述の矢島健一がバットをフルスイングしても、松田龍平は「いてー」くらいで済ませてしまっている。百歩譲って松田が不死身の超人だとしても、篠井英介があの程度のケガで済むのはおかしいだろう。
この作品はこういうところがちぐはぐだ。他のところでギャグをやってもいいが(エロとか)、生き死にに関するところは一定のシリアスさとリアリティを保たねば物語が成り立つまい。これは監督と脚本家の責任だと思う。
それからヒロインの尾野真千子、見事な泣きの演技だったが、キャスティングとしてはやっぱりちぐはぐ。
彼女が演ずるのは世間知らずのバイオリニスト、悪気はないが短慮かつ自分勝手な行動で主人公を振り回すという、いうなれば「小娘」の役である。その昔の角川映画で三人娘が演じたようなヒロインだ。特に赤川次郎原作の映画でそんなのがよくあったと思うが。
それを考えれば、この役に尾野真千子はうますぎる。微妙な大阪弁はアイドル感がなくもなかったが、みようによってはあざとくもある。
あと、松田龍平のソバットのところでカット割るなよとか、細かい文句もあるが割愛。
文句もあるが、こういう作品が作られること自体は大歓迎で、今後の一層のブラッシュアップに期待したい。その期待の分、評価に 0.5 を加算。