「新米パパへのエール」人生、ブラボー! うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
新米パパへのエール
報酬目的で行った精子提供が原因で、500人越えの子供の生物学的父親になってしまったダビッドに降りかかるドタバタを描いた物語。
海外ドラマではコメディ要素として「精子バンクへ提供したことがある」というネタがたまに出て来る。本作の舞台であるカナダを含め生殖医療の自由化が進んでいるエリアではこうした小遣い稼ぎもあるあるなのかも知れない。
ドラマでのオチは大抵「一度も使われることなく破棄されました」だが、本作のダビッドは140人規模の子供達から「父親を知る権利」を行使する訴訟を起こされ、訴訟の行方・日常の騒動・裁判資料を基に子供達をこっそり見に行く活動の三本柱で本編は進む。
父親、特に父性の芽生えににフォーカスした作品だからか、母親の影が殆どない。ダビットの母は故人で、育児の愚痴をこぼすダビットの友人も子持ちであるがそのパートナーが姿を見せることはない。
140人の子供たちの母親は一人も登場しない。父親を知りたいと言う子供たちに対し、匿名で精子提供を受けた母親たちや養育上の父親たちの心境が気になった。
強いて母親として登場するのはダビットの子供を身ごもった彼の恋人・バレリーくらいだが、劇中、彼女はダビッドのダメ男ぶりに愛想を尽かし背を向けている。ダビットの窮地に寄り添うのは彼の父親で、本作が描く本質は「親と子」というより「父と子」なのだろう。
男親の中には、パートナーのお腹が大きくなる様子を見ていても産まれた新生児と顔を合わせても、なかなか心から父親の実感を得にくい人もいるという。そんな、他人には言えない男性たちの不安に寄り添う作品と言えるのではないだろうか。
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