「3人の子供達の哀しみに満ちた瞳が目に焼き付き、音楽が心の慰めに!」命をつなぐバイオリン Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
3人の子供達の哀しみに満ちた瞳が目に焼き付き、音楽が心の慰めに!
これまでに戦災を描いた映画はどれだけ沢山制作されて来たのだろうか?
産業革命以降の20世紀に入ると特に戦争兵器も近代化し、それまでの戦争より遥かに多くの人間を、一度に効率的に殺傷する事の出来る兵器の近代化技術を人類は手にした。
そして、その兵器の使用に因る、被害者は戦闘員である兵士の命を奪うだけでなく、より多くの非戦闘員である子供と老人と女性の命を奪う事になる。(近年では女性の兵士も多数いるのだが、70年前は女性兵士の人数は多くは無かったと思う)
その第二次世界大戦当時、ナチスが台頭してくると、夥しい数のユダヤ人が虐殺されたわけだが、戦後、この人類の負の遺産である惨事を繰り返す事の無い様にと、ドイツを始め、世界の多くの国々に於いて、反戦映画や、戦災の悲劇を描いた映画が現在でも、こうして制作され続けてはいるが、一向に戦争は絶滅しないのが現実だ。
悲しい現実なのだが、人類史上、かつて戦争の起きなかった時代は無かった。今直世界の、必ず何処かの国々では、戦争が行われている。世界200カ国以上の国々の中で何十年も戦争をしないでいられる我が国は、世界レベルで見ると、極一部の安全で幸せな国である事が解るのだ。日本人は、本当に恵まれている事をもっと感謝して生きる必要が有ると、いつも戦争映画を観ると想いを新たにする。
この映画では、戦争の犠牲者となる天才音楽家の3人の子供達の友情と悲劇が描かれているわけだが、それよりも近年では、小学生位の子供達までが、銃を手に取り、戦闘に加わっている事も決して珍しい事では無い。その事実は救いようの無い人類の悲劇だと言える。
本当に、私は日本人に生れてきている事を、ありがたい事だと感謝している。
私の両親は、第二次世界大戦当時は小学生だったが、東京大空襲で家を失っている。
私が子供の頃は、嫌と言うほど、戦争中の苦労話を両親や祖父母から聞かされて育ったので、戦争映画はどんな作品でも、子供の頃に聞いた話も思い出すし、気が滅入って、嫌いなのだが、平和な時代を生きる事が出来ている自分には、これらの戦争映画をどれだけ嫌でも、戦争を生き延びた先祖がいてくれた御蔭で、今自分の命が繋がっている事を思えば、決して映画を観ても、本当の戦争の苦しみを理解する事は出来ないのだが、せめても、戦争映画を観る事で、今の時代に生きられている事に感謝するためにも、嫌いな戦争映画を観る事は、自分の義務でも有ると感じているのだ。
この作品は現在バイオリニストとなったハンナが孫娘に自分の子供時代の戦争体験を聴かせると言う回想劇になっている為に、映画としては、特別に、凝った作りや、特に大袈裟な演出はしていない。とてもシンプルで、ユダヤ人の天才バイオリニストのアブラーシャと同じく天才ピアニストのラリッサ、そしてドイツの子供であるハンナとそれぞれの家族とユダヤ人の音楽教師のイリーナの物語だ。この映画は特に、この3人の子供達の目線で物語が描かれている。彼らの友情と苦難が描かれる。音楽が戦争に利用されていると言う事も許し難い事だ。ナチスのユダヤ人虐殺により、150万人の子供が犠牲になったと言う。
数々のバイオリンの名曲が演奏されるのだが、音楽が人の心を癒やし、戦争の無い平和な世界を築く礎に成る事を願わずにはいられない。皆に観て頂きたい名作である。