桜、ふたたびの加奈子のレビュー・感想・評価
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秀作だと思います。
ごく普通の夫婦が不慮の事故で娘を亡くす事から始まる物語、妻は不条理な出来事に心を病んでいく。そして望まない妊娠をした女の子と出会い、期待を持って娘の身代わりと赤ちゃんに近づいていく。女の子を見守る先生家族との付き合いの中で加奈子の生まれ変わりは先生の長男だと判る瞬間は救われた思いがした。信じるかどうか判らないが、うちの娘は小さい時、(お父さんとお母さんの結婚式見てたよ)と話していた。前世があるのかと思った。とてもシンプルな映画だけれど桜の風景とか映像で心情を表現していて、特に日本のベートーベンといわれる佐村河内守の音楽が心をとらえて離さなかった。
親孝行は死なないこと。
私が思う最悪の親不孝とは、親より先に子供が亡くなることだ。
今まで幾度となくそんな場面を見ている。
こんな辛い親御さんの顔は見たくないとその度に亡き命を恨んだ。
今回の話に触れて思い出す、ひとり息子を亡くした同僚がいた。
今作に出てくる加奈子ちゃんと同じくらい、
子供好きのお母さんはとてもその子を可愛がっていたのだが、
ある朝出勤して訃報を聞いた、自宅で亡くなってしまったと…。
おそらくは母親の不注意であった点、どれだけ自分を責めたかと
思うとより辛く、それ以来あまり大した話をしていなかった。
そんな彼女から朗報を聞いた。妊娠した!とのニュース。
出産準備のため退職した彼女が、会社近くの産院で出産を終え、
そのお見舞いに行った際に、私に打ち明けてくれたことがある。
実は私も身内を亡くしているので(子供ではないけれど)、それで
教えてくれたのかな?と思ったけど、実はね…と切り出すと
「この子を産む前に夢を見たの。息子が出てきて、私に言ったのよ」
と、今抱いている赤ちゃんのことを詳細に彼女に教えたというのだ。
生まれ変わりとは言わなかったけど、内緒だよvって言われたから、
このことは誰にも話してなかったんだよ…と言われて、
それを私に話しちゃっていいのかい?と思ったけれど(嬉しくて)
良かったね、良かったね…と私も涙でグチャグチャになって喜んだ。
科学的にそういうことが証明されているわけではないが、
輪廻転生のことは信じている。ただ、あまりに分かり易くそれが
身近で起こったりすることはなく(気付いてないだけかもだけど)
だから感動に咽び泣いたこともない。ひょっとして、今作のように
逢いたい…逢いたい…と念じていたら、どこかで逢えたりするのか。
とはいえ、妻を支える夫の苦しみは、いかばかりだったろう。
子供を亡くして辛いのは親である夫も同じ、そして加えて、妻が
延々と亡くなった子のことを思い続けて、前へ歩んでくれない…。
我慢して、耐えて(おそらくはまた子作りをしたかもしれないが)、
それでも自分を受け容れてくれない妻に、ついに離婚を切り出す。
しかし妻を嫌いになった訳ではなく、苦しみから解放させたいと
願う(自分も幸せになりたいだろうし)そんな優しさが見てとれた。
原作とは違って、今作はひき逃げではないので、恨む場所がない。
亡くなった子供の遺志を汲んで、力強く生きていくしかないのだ。
偶然出逢った高校生が妊娠・出産をして、その子を生まれ変わりだ
と信じる妻が、トイレの前で子供を質問攻めにしたことに驚いた。
違う、絶対違うと思うよ…と思いつつ、そこまで我が子に逢いたいと
願う妻には空恐ろしい雰囲気まで漂う。さらにヴァイオリン音楽が
空を突き裂くように鳴り響くため、まるでサスペンスのように感じて
しまうところも多々ある。桜の咲き乱れた光景が、美しいのに怖いと
感じてしまう稀有な雰囲気を醸し出している。これは狙いだろうか…
ラストは意外な展開を見せる。あーそっちだったのか…と観る者を
翻弄する作りになっているが、それもあり得る結果。良い終わり方だと
思える半面、それを聞かされた夫婦(あちらの気持ちこそいかばかりか)
が、どれほどの理解者で温かい人間性の持ち主だったかにも救われる。
今度は幸せになるんだよ…。と、そればかりを祈ってしまった。
役者たちの熱演は良かったが、もう少し温かみのある表現があれば、
気持ちを和らげる観せ方ができたんじゃないか、と思って悔まれる。
(どの家族の元に生まれてきても、親子仲良く幸せでありますように)
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