「スピーディーな展開に目が奪われます。」刺さった男 かもしださんの映画レビュー(感想・評価)
スピーディーな展開に目が奪われます。
「スペインの恐るべき子供」と称され、海外新人監督の登竜門と言われたエイリアン3を断った男として、本国スペインのみならず、その名をハリウッドにも轟かせたイグレシア監督による風刺に満ちたブラック・コメディで、2012年の第10回ラテンビート映画祭で上映された作品です
鉄骨が後頭部に突き刺さり、それでも尚、意識がはっきりしているという男の物語。
現実的には考えにくいシチュエーションですし、主人公は身動き一つできない。
こんな、映画には不向きなネタをイグレシア監督は一気にまくし立てる事で、見事に作品のネタとして巧く活用しておりました
とにかく、ロベルトが事故に遭ってからの展開がスピーディーで全く目が離せない状態となります
動けない主人公に代わり、事故を目撃した警備員や発掘現場の関係者、救助隊などを動かし、カメラのカットも目まぐるしく変わります。
あっという間に大勢の人で溢れかえる事故現場をスクリーン上で目にする頃には、観客は映画的な技巧にスッカリ騙され、主人公が身動きしていない事を完全に忘れている事でしょう。
勿論、大量の人々が集まってからも怒涛の展開は休む間もなく続きます。
野次馬も増え、マスコミも駆け付け、とある連中も加わります。
事態は刻一刻と変わり、息つく間もなく展開していくのですが、主人公は寝たきり状態です(爆)
こんな出鱈目が観たかった、という私には充分過ぎる作品でした
主人公が身動き取れない映画ですと、大抵が「リミット」や「ブレーキ」のようなシチュエーション・ホラーや、「127時間」のようなヒューマン・ドラマになりがちで、動きの少ない作品ばかりですが、本作はそれらの真逆を行く映画
イグレシア・ファンは勿論の事、変わった映画が好きな方は是非ともチェックしてみて下さい