劇場公開日 2013年5月25日

「問題と可哀想だけを強調した映画」くちづけ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0問題と可哀想だけを強調した映画

2020年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

この映画を観るくらいならば、、
映画『海洋天堂』や『ギルバートブレイク』、『誰もが愛しいチャンピオン』、
漫画『ひまわり』、
児童文学『ぼくのお姉さん』、
専門書『発達障害の豊かな世界』
を見てほしい、読んでほしい。。

この映画で問題だ、可哀想と感じた方は、その後何をしている?
宅間氏は、監督は何をしている?
ボランティアの受け入れ先はたくさんあるけれど、行動したのだろうか?
劇場で、映画館で、自宅で、「可哀想」「問題だ」と言って、さも、意思高い系で優越感に浸るには良い映画。
でも、それで、感想述べて、他者を批判して終わり?
貴方は何をする?

リサーチは良くしてある。言いたいことも明確。
でも、この映画の企画者・脚本家・監督は、実際に知的障碍者や保護者・関係者と生活レベルで喜怒哀楽を共にしたことはないんだろうな。
”問題”のリサーチとして、彼らを対象者として”観察”・”調査”したことはあるのだろうが。
貫地谷さんも、自分の演技の参考に、施設を訪問したというが、演技の為だけなんだろうな。

親亡き後も、障害を持つ子が生きていけるように頑張っている方々を知っているだけに、いっぽんの気持ちはわかるものの、怒りがわいてくる。
 知的障碍者と関わって、日々頭を悩ませているけれど、彼らの生きる力にはっとさせられている身には、受け入れ難く…。
 ホームレスはダメだって。ホームレスだって、彼らなりに生きているとホームレスとつきあって思った。しかも”派遣村”とか、ホームレスを支援する人もたくさんいて、そういう中で、その人なりの生き方見つける人だっているし。親としたらホームレスとなった子を見たくないのはわかるけど。山下画伯だって、ある意味ホームレス。

確かに現実は厳しい。彼らが暮らせる施設を作ったって、逃げ出しちゃえばね。年金を充実させたって、キャッチセールス等彼らを餌食にしようとしている輩はたくさんいるし。簡単なことではない。制度を作れば済む問題ではなく、施設を作れば済む問題ではない。やっぱり人が生きていくには人が大事。

学歴社会を信じている人は、せめて高校を卒業しなければ、いい就職先に就けないと信じている。
でも、学歴よりも、技能よりも、大切なのは、自分が役に立っていると思える有能館。無理させて、その命の灯を消している保護者がなんて多いことか。
就労支援のスタッフが、「学歴があっても、職場のマナーができていない方が、学歴がなくとも、職場でのマナー(ごめんなさいと、ありがとうや、毎日職場に通うこととか)ができている方が、就労困難」とおっしゃっていたっけ。

彼らなりの自立を考えて、頑張っている人はたくさんいるんだよ。
誰かの負担になると決めつける前に、相談してほしかった。三人寄れば文殊の知恵と言うじゃない。袖すりあうも他生の縁。支援しているつもりでたくさんのものを貰っていると言うのは皆が言うセリフ。なにより、いっぽんがマコからもらったものは限りないんじゃないかなあ。負担と考えるのもわかるけど、いっぽんがマコからもらった幸せをおすそ分けするってかんがえてもいいのじゃないかな?
まあ、そんな綺麗事で済む問題ではないけれど。皆自分のことで一杯だし。

なんて、自分が、そういう方々と関わって、直球勝負の知的障害者の批判にへこみながらも、貰ったものもたくさんあるから、やはりいっぽんの思いには賛同しがたい。

まあ、知的障害者を取り巻く環境をわかりやすく、インパクトを与える方法で示したという点では価値ある作品です。(年金使い込む親は確かにいる。でも障害者の親だけじゃない。子どもの給食費や教材費、児童扶養手当を使い込む親はたくさんいる)

とはいえ、貫地谷さんと宅間さんの演技はちょっとね。よく特徴をとらえていらっしゃるけど、時々素に戻る。長い台詞やアップが多かったから仕方ないけど。
『海洋天堂』のタ―フ-を演じたウェン・ジャン氏や『ギルバート・グレイプ』のアーニ―を演じたディカプリオ様には及ばなかった。
島田さんともうひと方は凄かったけど。
演技的に良かったのは、田畑さん。親族としての苦しさと愛おしさがとても伝わってきた。

親が子に残さなきゃいけないものって何だろう。障害児を抱えられる親御さんだけでなく、すべての親に考えていただきたいです。
その切り口としては、価値のある映画です。

とみいじょん