「この映画観て少し反省した」エンド・オブ・ウォッチ 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
この映画観て少し反省した
警察小説とか警察映画が大好きなのだが…。警察内の腐敗とか裏切りを描いた古臭くてドロドロしたやつ。
(デビッド・エアー監督の前作「フェイクシティ」はまさにそんな映画だった。)
で、本作のベクトルは全く逆。
パトロールの巡査2人が主人公。
普段はバカ話したり小学生並みの悪戯を同僚に仕掛けたりする気のいい兄ちゃん2人組。
で、時には命をかけて街の住民を助けたりする。
腐敗とか裏切りとかそういう汚い話は一切無し。
(L.A.の警察署が全面アシストしてるからそりゃあんまり悪い話も描けないだろうけどさ)。
突出してるのは2人がパトロールする街がL.A.サウスセントラル地区だという事。
アメリカでも一番殺人の多い地区で
パトロールしていて、常軌を逸した極悪な事件に次々と遭遇する。
(監督はこの地区の出身らしい。それだけに荒んだ感じが淡々と描かれていてリアル。)
えらいなあと思ったのは、
トラウマになりそうな殺伐とした現場に日々接していながら、2人があくまでも普通の人であるということ。
家に帰れば家族や恋人を大切にし、日常生活の中でささやかな幸せを見いだすような普通の人たち。
その普通さが、なんと強靭なのだろうと暫し考えさせられた。
私の好きな警察小説・映画は
犯罪と密であるが故に残酷さに捕われて、自らも崩壊していくような刑事たちを描いたものが多かった。
(例えばエルロイの小説とか、映画で言えば「バットルーテナント」とか。)
でも考えてみれば、現場の警官たちがいちいち崩壊していったら、警察成り立たないもんねえ。
現場の名も無き巡査たちが踏ん張って普通を保ってるからこそ、パトロールも成立するんだもんなあ。
監督は普通であることの強靭さを描きたかったのだと思う。
私はどうしたって滅びの美学的なものに目を奪われがちだが(古っ)、それだけじゃダメだよなあと、この映画観ながら少し反省したのであった。
「壊れた世界を壊れた人間が彷徨うのがノワール
壊れない人が壊れた街を彷徨うのがハードボイルド」(by滝本誠氏)だとすると
この映画、壊れなかった普通の人のハードボイルドだなあと思う。
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エアー監督の演出、ドキュメンタリー風のところが個人的には若干過多に感じた。また、多少ご都合主義的な話の展開でもあるなあと思ったり…。そういった多少の?もあるのだが、
エアー監督が関わったこれまでの警察映画「フェイクシティ」「S.W.A.T.」「トレーニングデイ」とはまた一味違う警察映画を魅せてくれて新鮮だった。
今後もいろんなタイプの警察映画を撮って欲しいなあ。
主演のジェイク・ギレンホール&マイケル・ペーニャもとても魅力的だった。