劇場公開日 2013年2月15日

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「デニーロの貫禄たっぷりの演技はいいものの、観客を置き去りにして、謎めく演出に不満。」レッド・ライト 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5デニーロの貫禄たっぷりの演技はいいものの、観客を置き去りにして、謎めく演出に不満。

2013年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ニセモノ超能力者側と科学者が対峙するラストシーンは見応えあるものの、そこに行き着くまでの過程が明瞭でなく、すっきりしませんでした。それはより謎めいて見せようとする監督の過剰演出が目立ったからです。
 超能力者サイモンをニセモノとして追及する、科学者のトムの日常に様々な異変が起こり、身近な人間が次々と死亡することも相まって、一時は超能力者の呪いとも思えるスリラホラーな展開に。このルックで攻めるなら、怖さという点で統一して欲しかったと思います。 途中で、サイモンの部下にトムが襲われ、殺されそうになるシーンが入ると、それはそれでサスペンスとしては怖さがあったのですが、スリラーとしては興ざめです。トドメは、なぜサイモンはインチキ超能力者だったのに、トムの周りで超常現象が起きたのかということがネタバレされると、ちょっとガッカリ。
 サイモンの見せる超能力の全てにからくりがあると化けの皮を剥がすよりも、それでも科学者であるトムが明かせない事象があり、最後になにを仕掛けてくるのか解らない展開のほうが、より不気味だったと思います。
 やっぱり超能力者と科学者がガチンコバトルする作品であれば、製作する側も超能力がインチキか、本当に実在するのかどちらか旗幟をはっきりすべきでしょう。どっちか解らないスタンスというのは、納得できません。

 もう一つ気になるのは、謎めいたところを強調するあまり、観客を置き去りにして、突然いろいろな現象が起こることです。それが本作を難解な作品と誤解してしまうようにしています。ラストの展開を見れば、それほど複雑ではなかったと感じるのですが、中盤までは取っつきが悪く感じました。もう少しサイモン側とトムの直接対決に絞り込んだほうがシンプルになって、解りやすくなったことでしょう。

 ドキドキ、ハラハラさせる演出は、『[リミット]』でたっぷり見せ付けてくれたロドリゴ監督だけに、そんなに気負わないで今回もB級映画と割りきって、自分の得意な演出方法のなかで手腕を発揮させればよかったのです。大物デニーロの投入で、中身以上の大作感を出そうとして逆効果になったのではないかと思います。
 それでも、デニーロの伝説の超能力者が放つカリスマぶりが圧巻です。本当に超能力があるのかないのか、目が見えてなさそうで、実は目が見えているのかもしれないという真贋入り交じったソロモンの怪しさを、見事にどっちににも見える怪演を披露してくれました。

 そんなサイモンに執拗に迫る若き科学者トムも、キリアン・マーフィが狂気に近い信念を見せて、こちらも好演です。ただの好青年ではなく、エキセントリックなところを見せるトムの性格が伏線となって、ラストの超常現象が起こった原因を巡るどんでん返しに、効いてくるのです。

 ところでレッドライトとは、降霊会の時使われる赤ランプのこと。そんな赤ランプを使って部屋中を赤く染めなくとも、霊界とのコンタクトは可能なのにと感じました。

 最後に、エンドロール終了時に出てくるワンシーンがどんな意味を持つのか気になりました。

流山の小地蔵