「“知の力”」ハンナ・アーレント ko_itiさんの映画レビュー(感想・評価)
“知の力”
けれん味(らきしもの)は冒頭のアイヒマン拉致とハイデガーとの秘め事しかないという地味な運びで、まさしく”ザッツ岩波映画"
中で語られる「悪の凡庸さ」は主題ではなく主人公の思考が周りにもたらす影響を自信の過去を通しながら交錯させて描いてゆくつくりになっている。
知の目的は観念を打破することにあるが、それが通例の感覚と離れすぎると本来理性的である “知” は拒否反応を起こす。(例えるなら古典物理学と量子論)ハンナの主張は当時としてはそれに相当した。だから “知” の仲間達は反対し、対して彼女の支えになるのが夫ハインリッヒ、友人で小説家メアリー、秘書ロッテで理性的ではない “情” の人々であるのは興味深い。そして “知” と “情” を併せてもつ師でもあるハイデガーは “知” を取って文字通り決別するのだ。
そして付け加えるならクライマックスの講義で聞き入る “知” でも “情” でも結ばれてはいないニュートラルな存在でもある学生達は映画ではバランスをとった立場になっいてオーソドックスだが作品の主題をうまく着地させている。
序盤、中盤、終盤にベッドに横たわり静かに煙草を咬む主人公が描写される。序盤では先を進ませる機能として、中盤では後の展開を予兆させる機能として、そして終盤は揺るがない意思として表現されている。そこに “力” を感じる。
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