「悪の発生するところ」ハンナ・アーレント サチコさんの映画レビュー(感想・評価)
悪の発生するところ
ナススSSのアイヒマンの裁判を傍聴し、彼が平凡であり悪は平凡な人間が思考を停止し人間を止めることから発生する、アイヒマンの職務に関わったユダヤ人リーダーたちの振る舞い方で何人もの命は救われたはず。とした旨の論文を雑誌ニューヨーカーに掲載し、大論争を巻き起こした件を中心に描く。
アイヒマンの裁判部分は実際の映像を取り込んでいます。
彼女の論文に対して大衆の言い分は
彼女はアイヒマンを擁護した。
同胞であるユダヤ人を貶めた。
彼女はアメリカに亡命したドイツ系ユダヤ人で、自身も強制収容所を経験しています。
けれど彼女は言います。
私が愛しているのはユダヤ人ではなく友達。
考える事で人は強くなる。
この裁判について書くものは理解しなくてはいけません。だから、アイヒマンを理解しようとしているのです。と。
名言がどんどん出てきます。
ハンナ・アーレントは惑星の名前になったほど、今では人々に敬意を示される存在です。
その彼女が生涯をかけて何を分かり伝えたかったのか、それが率直に伝わる映画です。
私は恥ずかしながら彼女について何もしりませんでした。けれど、力強い演説に引き込まれます。
人として、善だけが人の根源的なもの。と説いた、その人としての思考を人に伝えようとしていたように思います。
悪とは何かを生涯思索したと最後にテロップが出てきます。彼女の思想は冷酷で傲慢だと、友人も彼女を見限る中、彼女は思想を貫き考え続けた。
とても分かりやすく描かれた、夢中になれる映画です。興味本位で手にとっても大正解な一本だと思います。そのあと色々考えちゃうけど。
彼女のwikiにある名言集にある
「嫌いな人の真実よりも、好きな人の嘘がいい」
この心理が思考の邪魔をする。本当に思考がとまる。
この映画観て本当に良かった。