「クロサワ映画の最高エンターテイメント!」隠し砦の三悪人 かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
クロサワ映画の最高エンターテイメント!
脚本監督、黒澤明。
カテゴリーはなんと、敵領地を突破するロードムービー。
【ストーリー】
戦が終わった。
敗軍の秋月軍に参加した百姓の太平と又七が、根城にもどる道すがら、互いになじりあっていた。
益体ないやり取りを飽きずにつづけていた二人だが、城は天守まで炎上、しかもうろたえている間に敵軍の山名家手兵にとり囲まれ、捕縛されてしまう。
場内に集められた敗残兵たちにまじる彼らだが、天守の炎上が盛んになり、崩落すると混乱に乗じてどうにか逃げおおせる。
追っ手をふりきり川ぞいでひと息つくと、流れされた薪枝に、秋月の紋の刻まれた黄金が仕込まれているのに気づく。
所有をめぐり、またぞろ揉めはじめる二人。
そこに、あきらかに上級の侍然とした男があらわれる。
男は六郎太と名乗り、二人に命じて黄金を集めさせ、急峻な崖に隠された砦に連れてゆく。
そこには若い女がいて、六郎太は彼女を雪姫と呼び、上に置いていた。
この映画、アクションが容赦なく危険で、逃げた騎馬兵を追いかけて、六郎太が馬上で八相にかまえて並走し、斬り落とすシーン。
敵兵役のスタントマンが、疾走する馬の足元に落ちるんですよ。
おもわず「あぶな!」って声出ました。
六郎太役の三船敏郎の動きも落馬の危険あるし、よくこんなの生フィルムで撮れたなと。
戦後、競馬で落馬した騎手が、国内だけでも20名も死んでるんですよ。
大怪我なんて数しれず。
落馬はスタントアクションでも本当に危険なので、ぜったいにマネしないでくださいね。かせとの約束だよ。
印象的なシーンは数多く、途中で立ち寄った村の火祭りはその一つ。
手塚治虫の『火の鳥 乱世編』によく似たシーンあるんですけど、あれ絶対にパクリと思ってます。
おっと、パクリではなくリスペクトですね。まあどっちでもいいや。
どっちも抜群におもしろいですよ。
ちなみにマンガは見開き2ページの手塚直筆の大作絵があるので、ぜひぜひ見てほしいです。
次に雪姫。
クロサワ二大ヒロインの陽性側。
男まさりで、黒々とバッキーンとした逆八の字眉。
痛快な性格で、黒澤明という人の先進的な思想が解るようなキャラクター。
さらに六郎太のライバル、山名の侍大将田所兵衛。
陣幕を間にした六郎太との果し合いは、槍を用いた時代劇でも珍しいもの。
剣術指導の香取神道流・杉村嘉男によるシビアな技術の応酬も相まって、非常にスペクタクルなものに仕上がってます。
ラストもまた善き。
お金が絡むとずっと罵倒しあってた百姓の二人が、なんかゆずりあいながらイチャイチャ村に帰るんですよ。
この映画の真のヒロインは、この二人だなって思いました。
あのジョージ・ルーカスが、あの『スターウォーズ』シリーズの人気ロボコンビ、あのC3POとR2D2の元ネタにしたのが、この太平と又七っていうのは、とても有名な逸話ですね。
めっちゃ楽しい映画です。
映画をあんまり見ない人に黒澤作品すすめるなら、自分は断然、この『隠し砦の三悪人』です。
書き忘れてたけど、隠し砦のロケ地、六甲山の蓬莱峡を見にいきました。
弟の車で、時間がなくて通りすぎるだけでしたけと、チラッと見えた独特の威容は、ファンとしては瞬間で蓬莱にとどきそうな上がり方しましたよ。
よかったぜ!
数日前に久々にアマゾンプライムで観たばかりです。何度観ても痛快で見事です。見どころいっぱいの作品ですが、自害の短刀を渡して今生の別れを交わすシーンが一番泣けて好きです。劇場で見る機会が無くなったのは寂しいです。黒沢作品がいっぱいで、この作品に評価5をつけられていて嬉しくなってコメントさせて頂きました。
コメントありがとうございます。
ほんとに三悪人ってタイトル、なんで付けたの〜?
と思います。
騎乗シーンは、蜘蛛巣城でも、かなり駆けてますね。
あの時代は、乗馬できる俳優がけっこういたんでしょうね。
クロサワの要求はちと高いけど。
今晩は。2作へのコメント有難うございます。
新作を映画館で観るのは、勿論良いですが、今作の様な歴史的名作を配信で独り真夜中に観るのも良きモノですね。
ではでは。