劇場公開日 1958年12月28日

「軽いタッチ、重厚な映像。」隠し砦の三悪人 Zipangu Genさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0軽いタッチ、重厚な映像。

2019年3月31日
PCから投稿

前半では群衆シーンや城の焼け跡のセットなどに金をかけまくっている。こんな迫力のある金のかかった映画が、このように面白い大作になって後世に残されたことを喜びたい。
今見てみると一番有名なあのシーンは移動撮影でなくてパンなので少し驚いた。しかも長いカットでなく切り繋いだカット。長い移動撮影だと観客の目が慣れてしまって移動撮影の効果が薄れる。それで一旦、別カメラからのショットに切り替えそして再び移動ショット。それを三回やっている。迫力あるシーンってのは物語とリンクしてこそ生まれるのではあるが、黒澤映画にはこのようなカメラワークの工夫がやはりそこには有るのである。・・・それから長回しのシーンについても書かねばなるまい。この映画には一箇所、カメラが固定されたまま異常に長回しで芝居を見せるシーンがある。なんで、あんなに長回しなのか?・・・実は、あのシーンがクライマックスなのである。この映画は冒険スペクタクルであっちこっちに派手な見せ場がある。一つのアクション映画である。ところが、そのクライマックスだけが固定カメラによる静かな長回しなのだ。あのシーンで長回しによる緊張感がしっかりでているから最後のところでスカっとできるのである。なんという演出の妙であろう!!
次に脚本についても少し。
脚本的に成功したのは二人の欲張り達の設定である。くどいように二人が言い争うが、彼らがもう少し物分りがよかったら映画として成り立たなかった。「こんな二人を上手くコントロールして無事脱出できるだろうか?」というハラハラ感がこの脚本の背骨となっている。前半がちょっと長いように見えるがそのあとが正にジェットコースター。脚本家たちが頭をひねって最高に上手く仕上げた娯楽大作だ。
フィルムの美しさがよく現れていてとくに三船のアップが非常に味が出て美しく撮れている。デジタルでは今のところ、あの味わいは出ない。映画監督よ、映画はフィルムで撮れ。

タンバラライ