「巡る巡るよ因果は巡る」LOOPER ルーパー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
巡る巡るよ因果は巡る
まず本編とはあまり関係無い話だが、とりあえず本作のTVCMは煽り過ぎだと思う。
「『マトリックス』以来の衝撃!」とか「どうしたらこんなアイデアがッ!」とか、
なにゆえ無駄にハードルを上げたんすか。跳べずにスネ打っちゃいますよアナタ。
そんな無責任なCMはさておき、映画は面白かった!
少々冗長に感じたのと、『タイムトラベルにTK(サイキック)まで本筋に
絡めるって欲張り過ぎじゃね?』と思えた点は残念だったが、
今までのタイムトラベルものに有りそうで無かったアイデアの数々や
先読みのできない展開、そして物語の意外な落とし所が面白い。
僕が思うにこの映画最大のアイデアは、“ルーパー”という殺し屋の奇抜な設定以上に、
『現在の自分の行動が未来の自分の記憶や肉体を更新してゆく』という設定。
これは今まで有りそうで無かったんじゃないかなあ。
つまり、未来を知る者さえも未来を操る事は出来ない。
それを決めるのは、未来の自分でも無ければ過去の自分でも無い。
今この瞬間の自分の決断だと言うこと。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の名台詞を思い出しますなあ。
「未来に道など無い!」
もうひとつ、多分これもテーマだったのかなと思うのが、“因果は巡る”ということ。
殺人の見返りに得た銀で、悠々自適な引退生活を夢見る現在の主人公。
愛する妻を奪われまいと、無垢な子供さえ殺して回る未来の主人公。
(本当に彼女を想うなら“会わない”という選択がベストだったと思う)
そして復讐の為に怒れる殺人者となりつつある少年。
自分の心を満たす為に他人を殺そうとする者達によって形成されるループ。
悲劇が憎しみを生み、憎しみが次の悲劇を生む、普遍的な負の無限ループ。
その悪循環を断つには誰かが“我”を棄てねばならなかった。
殺人と遊びとドラッグに明け暮れ、挙げ句は保身の為に親友をも売った
「利己的で軽薄な」主人公は、物語の最後で初めて他人の為に命を張った。
我欲の為に他人を傷付ける人生は虚しいし、更なる不幸しか生まない——
この物語はそんな事を伝えたかったのかも知れない。
ハァ……僕が書くとどーしてもカタ苦しくてツマラン映画みたいになっちゃいますねえ……。
テーマの話ばっかでエンタメ要素についてはここで書き切れなかったが、
エンタメ性とテーマ性をうまく融合させた佳作だと思います。
観て損ナシの3.5判定!
<2013/1/16鑑賞>