劇場公開日 2013年1月12日

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「タイムパラドックスを解消した斬新な設定と脚本」LOOPER ルーパー といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイムパラドックスを解消した斬新な設定と脚本

2021年1月13日
PCから投稿

タイムマシン(時間移動能力)の登場するSF設定は今や一つのジャンルとなり、映画やアニメなどあらゆる作品で見かけます。

テレビアニメで言えば国民的アニメ「ドラえもん」も言ってしまえばタイムマシンを使って過去改変を行う作品ですし、それ以外には私が大好きな「シュタインズ・ゲート」もそうですね。
映画で言えば「時をかける少女」「TENET」「バタフライエフェクト」などが私の鑑賞済みでお気に入りの作品です。
とにかくこういう時間移動系SF作品は私の大好物で、色々観てきました。

ただ、人気ジャンル故にあまりにも多くの作品が生み出されてしまい、「時間移動」を利用した、「あんなこといいなできたらいいな」な設定やストーリーはほとんど掘りつくされてしまっているようにも感じます。

しかし本作「LOOPER」は色んな意味で斬新過ぎました。今までの時間移動系SFにありそうでなかった設定が多く登場し、最高に面白いSF映画だったと思います。

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タイムマシンが完成した未来の世界。タイムマシンは非常に危険な装置であるために使用が禁止されていたが、悪の組織がタイムマシンを秘密裏に使用しているのだった。未来の世界では犯罪捜査が発達して殺人が行えないため、現代にターゲットを送りこんで殺害しており、現代の世界の殺し屋はルーパーと呼ばれていた。ルーパーとして仕事をしていたジョー(ジョセフ・ゴードン=レビット)はいつものように未来から送り込まれたターゲットを殺そうとしたが、ターゲットが未来の自分(ブルース・ウィリス)であることに気付き、動揺からターゲットを取り逃がしてしまう。仕事を失敗したことで自分の組織からも追われる身になってしまったジョーは、未来の自分を殺害するために奔走することとなる。
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「未来の自分を殺すために奔走する」って、凄いですよね。よくこんな時間移動モノの設定思いついたなと感心してしまいます。未来のジョーは、単純に死にたくないから逃げているわけではなく、ある目的があって未来を変えるために行動しています。現代のジョーは未来の自分を取り逃がしたことによって組織に追われるようになり、今の自分が生き残るために未来の自分を殺そうとする。

現代の自分と組織から逃げる未来のジョー。
組織から逃げつつ未来の自分を追う現代のジョー。
そして二人を追う組織。
迫力のある三つ巴の逃走劇が非常に面白いです。未来のジョーが何のために過去で行動しているのかが段々と明かされていくところも良かったと思います。

脚本の面白さやアクションの迫力もさることながら個人的に非常に興奮させられたのは、今作における時間移動の設定やタイムパラドックスの問題の回避方法です。

この作品では、タイムマシンで転送されてきた人間が何もないところに突然現れます。時間移動のシーンはこの手の映画の肝と呼べる部分のため、「ターミネーター」のように電流がビリビリと走ったり「時をかける少女」のように謎の異空間を通り抜けたりするような大仰なCGや映像を使って演出されがちなシーンですが、この作品にはそのような演出はほとんどなく、それどころか効果音すらなく、実に質素で淡々とした時間移動です。冒頭にルーパーに関する説明が何もなされていない状態で、何もないところに銃を構えているジョーが音も無く突然姿を現した男を銃殺するシーンで私の心はグッと掴まれました。映画を観ているとたまにある、冒頭の1シーンだけで「この映画絶対面白いな」と分かる直感がこの作品にもありました。

大抵のタイムトラベル作品では「いかにしてタイムパラドックスを起こさせないか」、もしくは「いかにして過去改変を起こすか」という二つの点が問題になることが多かったり、タイムパラドックスなどについて長々と説明するシーンも多かったりして、これが「タイムマシンSFが難解になる要因である」と私は考えています。
しかし今作はタイムパラドックスが起こることについて「ホントはダメだけど非常事態だからしょうがないよね」くらいのスタンスですし、むしろ積極的にタイムパラドックス起こすような行動を取るのであんまり難しいこと考えないで観ることができました。
しかも、タイムパラドックスなどに関する(本来であれば)重要な説明部分を「時間がかかるから説明したくない」という一言で片付けます。とんでもない力技です。しかしこれによって、長々と説明する時間も短縮されましたし、難解な説明が無くて見やすくなりますし、タイムマシンSFにありがちな多少の矛盾もあんまり気にならなくなりました。強引だけど効果的な手法です。

ただ、「矛盾はあんまり気にならない」とは言いつつ、どうしても違和感の残るシーンがありまして。
「未来では犯罪捜査が進歩して殺人ができないから過去に人を送り込む」という設定なのに、未来で殺人を犯すシーンが登場してたのが「あれ?」って思いましたね。この映画の根幹となる設定なのに、ちょっとガバガバ過ぎやしませんか。そういう「流石にここまで矛盾してるとツッコミ入れますよ」って部分が何か所かありましたので、そこが不満ポイントですかね。でも、その不満があっても「面白い」と断言できる映画でした。

この映画の「ここが良かった」って語りたい部分はたくさんあるんですけど、何喋ってもネタバレになりそうなのでこのへんにしておきます。

タイムトラベルものが好きなのであれば、絶対に観ておくべき作品です。
オススメです!

といぼ:レビューが長い人