「STAR WARSでああいう展開にした片鱗がみられる」LOOPER ルーパー REXさんの映画レビュー(感想・評価)
STAR WARSでああいう展開にした片鱗がみられる
監督、たしかこの作品をプロデューサーに評価されてSTAR WARSに抜擢されたのではなかったか。
彼が描いたエピ8は私には強烈に受け入れがたいものがあって、逆に過去作品が強烈に気になっていたのだが、ようやくこの作品を見てあのSTAR WARSになった理由がわかったような気がした。
途中で主人公が変わっちゃうんですよ、この人。ルーパーの話だったのに、途中でTKという超能力を持つ男の子シドの話になっちゃうんですよね。
もちろんヤング・ジョーの友人がTKを持つルーパーだったりして、冒頭に布石はまかれてるんですよ。
でもね、そんなことすっかり忘れてた矢先に、どかんとシドがTK爆発させて、そこからシドと母親のサラの綱渡りのような関係性に多くの時間が割かれていき、せっかく未来からきたオールド・ジョーのブルリーのパートは殆ど無いに等しく、ヤング・ジョーのジョセフ・ゴードンもどんどん影が薄くなる。
いや、シドは将来ジョーの愛妻やルーパーを殺すレインメーカーになるので重要な人物なんですが、利害の対立するヤングジョーとオールドジョーの共闘か対立かを楽しみにしていたこちらとしては、やや肩すかし。
ルーパーを閉じないと(殺さないと)自分が殺されるヤング・ジョーが、未来の自分であるにも関わらず無慈悲にオールド・ジョーを殺そうとするのはわかるのですが、シドがレインメーカーならシドを殺すことで二人の利害は一致しないだろうか?
ヤングジョーが自分の命と天秤にかけるほど、そこまで母子と交歓があったかというと、母親のサラと一晩Hしただけ。あのラストにするならもうちょっと、サラとヤングジョーの間に恋だの愛だの育んだらどうですか?ライアンさん。優しくしてくれた娼婦の面影をサラに求めたにしても無理がありすぎでしょ。
あれだけ人生への執着をみせていて、未来の自分と話し合う素振りさえみせなかった男が、急に自己犠牲に目覚める行為に説得力がないんですよね。
オールドジョーを撃って、サラと結ばれシドの父親代わりになるならまだしも。
とはいえ全体的には面白くなくはない。タイムスリップの描写は省略の仕方が独特でテンポがよいし、ルーパーの肉体がリンクしていることを利用した仕掛けも面白いし、過去を書き換える度に改竄されていく記憶など無理なく帰結してる。
エピ8でも主人公以外の人間に時間かけ過ぎ、また自己犠牲の展開が鼻につくほど多かった。その片鱗がこの作品でも見えましたね。群像劇や多重構成が好きなんですかね。
あふれる母性で主役を喰っちゃったエミリー・ブラントはチャーミングだし、シド役がめちゃくちゃダークサイドに堕ちた表情でおののかせてくれるし、エピソード1のアナキンよりもアナキンらしいので一見の価値あり。
また、一瞬だけみせるブルリーの情けない落ち武者ヘアスタイルもお得感(笑)。