「1周間40万円のセラピーを100分2千円(夫婦50割引適用)で受けられる」31年目の夫婦げんか マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
1周間40万円のセラピーを100分2千円(夫婦50割引適用)で受けられる
子どもたちが独立して夫婦二人だけの生活。毎日が同じパターンの繰り返し。すぐ倦怠期という言葉を使いがちだが、パートナーに飽きているわけでも嫌っているわけでもない。いつの日からか惰性で暮らしている二人。そのことに気づかず平穏な生活を送っていると思い込んでいる。
そんな60代の夫婦にメリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズが扮する作品。
この夫婦の場合、妻が惰性で生活することにピリオドを打とうと行動を開始する。刺激がない人生に嫌気が差したというよりも、この先への危機感が募ったといっていい。このまま、ただの同居人と化していくのが怖いのだ。
この物語では、老後の人生設計をどうするとかではない。互いに思いあって仲良く暮らしていくにはどうしたらいいかという悩みだ。もちろん会話も大事だが、妻の望みはスキンシップであり、夜は以前のようにベッドを共にしたいという願いがある。
なかなか口に出して人に相談できることではない。
悩んだ末、妻が見つけたのが、スティーヴ・カレルが演じるカウンセラーだ。1周間のカウンセリング・コースに嫌がる夫を強引に連れ出す。このカウンセラー、口調は物静かだが、毎日出される課題は過激で、これが笑いを生み出す元になる。いわば荒療治で夫婦仲を元に戻そうというのだ。
課題に進んで取り組もうとする妻と、バカげたことと決め込んで相手にしない夫、悲喜こもごもの1週間を笑いながら傍観するが、実は観客こそがこの作品を通してカウンセリングを受けていることに気づく。
31年間溜め込んだ鬱憤を吐き出させたあと、この夫婦を待っている運命とは?
エンドクレジット。画面の大半を占領して描かれる事の顛末に目を奪われて、クレジットは1行も読めない。
妻の「残念なのは、もう時間が残り少ないこと」という最後の一言が胸に残る。
この作品、男に観て欲しいという意見が多く寄せられそうだが、これはお互いさま。ぜひ女の人にも観て欲しい。一番のお薦めは一緒に観る。