「恐ろしく地味な珍道中。だからこそ心に沁みるものもある。」それぞれの空に たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
恐ろしく地味な珍道中。だからこそ心に沁みるものもある。
偶然出会ったイラク帰還兵の3人が、それぞれの目的のためにアメリカを横断する様を描くロードムービー。
主人公の1人、退役するために帰国した中年軍人チーバーを演じるのは『トップガン』『ショーシャンクの空に』の、オスカー俳優ティム・ロビンス。
主人公の1人、紅一点のコリーを演じるのは『きみに読む物語』『ミーン・ガールズ』のレイチェル・マクアダムス。
主人公の1人、怪我の治療のため帰国した青年TKを演じるのは『ミリオンダラー・ベイビー』『バベル』のマイケル・ペーニャ。
イラク帰還兵というナイーブな問題を扱っていながら、映画のタッチは非常に軽くコミカル。
久々の家族との再会に胸躍らせる中年男。インポテンツの治療をする為ハリウッドを目指す青年。亡き友の家族に形見のギターを渡すために旅する女性。
バラバラの目的を持つ3人が1つの車に乗り込み、旅をするうちに友情を育んでいくというロードムービーの定番のような内容だが、それぞれのキャラクターが非常に個性的で楽しく、好感が持てる人物なので爽快な気持ちで彼らの旅を見届けることができる。
コメディ映画ではあるが、3人それぞれの戦場で受けたキズや、一般人の持つ兵士に対する距離感の様なものが露骨では無いが確かに描かれており、戦争というものを考えさせられる内容にもなっている。
旅をしていく中で、それぞれが新たな問題を抱えたり、葛藤したり、成長したりする。
その姿は人生の縮図を表している様で、観客にとっても自らの抱えている問題と向き合う良いきっかけになるのではないだろうか。
愉快な3人組の珍道中を見ているのは楽しいのだが、大きな問題が起こる訳でもないので、やはり物語の推進力は弱い。一言で言えば退屈なところも多い。
しかし、たまにはこういうスローペースな映画もあって良いのではないだろうか。
インポも治るレイチェル・マクアダムスの魅力に注目です!