「思っていた以上に良作だった!」図書館戦争 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
思っていた以上に良作だった!
シリーズ化もされている有川浩の人気小説の映画化。
メディア良化法によって本が厳しく検閲されている近未来で、本の自由を守る“図書隊”の活躍。
本の自由を描いた近未来世界と言うと、レイ・ブラッドベリ原作&フランソワ・トリュフォー監督の名作「華氏451」が思い浮かぶ。
管理社会を痛烈に批判した「華氏451」と比べると、本作はあらすじを読む限り漫画チックだなぁとタカを括っていたら、思っていた以上に良質のエンターテイメントだった。
娯楽性を全面に押し出し、アクション、ラブストーリー、コメディのバランス加減も絶妙。
話も分かり易く、テンポも良く、ラストまで飽きさせない。
見所はやはり、アクションとラブストーリーと言えよう。
軍事アクションの醍醐味は充分。銃撃戦も肉弾戦も音響も迫力アリ。
高校生の時に本を守ってくれた図書隊員を“王子様”と恋焦がれ、図書隊に入隊したヒロイン。その動機も鬼教官や同期の隊員との恋模様も少女漫画のよう。でもその分、ヒロインを軸とし、すんなり物語に入っていける。
(ヒロインの“王子様”が上司の鬼教官であるとすぐ予想がつくのはご愛嬌)
岡田准一と榮倉奈々は、読者が選ぶ理想のキャスティングだけあってハマり役。
特に岡田准一はアクションが素晴らしい。「SP」の時もそうだが、体を張ったアクションが出来る本格派。ハリウッドで披露しても何ら恥じる事はない。
エンタメ要素だけではなく、本の自由の訴えも疎かにされていない。
本や映画を模倣した事件は現実に起こっている。
だからと言って、本や映画に罪があると言うのなら暴言だ。
刃物による殺人事件が起こったから刃物を使っていけない訳はない。交通事故が起こったから車に乗っていけない訳はない。
罪があるとしたら、それらを歪んで受け止めた人の心の浅ましさだ。
殺人や暴力を肯定する本や映画など、この世には一切存在しない。殺人や暴力を描き、人の心の闇や愚かさを訴える。それが出来るのが、“表現の自由”なのだ。
いつだって守る側の立場は弱い。作中でも図書隊が銃を持つのはあくまで防衛の為。
殺傷が目的ではない図書隊の姿は、殺人や暴力を訴える本の“表現の自由”を身を持って体現している。
本を愛する人たちに捧ぐ。