劇場公開日 2013年4月27日

「面白いが違和感いっぱい」図書館戦争 こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5面白いが違和感いっぱい

2013年6月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

物語の展開が面白い。キャラクターもそれぞれ魅力的。メッセージ性も高く評価していい。しかし、見ている間、どうも違和感がある。しっくりと映画の中へ入っていけないのだ。

 この映画は、以前にアニメ化されてテレビでも放映されている。その印象が残っていたのかもしれないが、演出がリアルすぎるのが気になって仕方なかった。図書隊の訓練シーンは、まるで自衛隊のビデオのよう。戦闘シーンもアニメ以上に迫力満点!。だから違和感なのか、ではない。実写にする必要があったのかどうか、ということだ。

 この映画にかかわらず、実写とアニメの决定的な違いは、実写に比べるとアニメの方が作者が発信しているメッセージ性や社会性が薄くなることだ。それは生身の人間が動いたり、実際によく目にする街や建物を背景にして物語が展開するのと違って、アニメは絵が動くだけなので、実際の街が舞台でも、空想にしか見た目、とらえられないからだ。ただ、アニメの鮮やかな色合いとキャラクターの面白さから、薄いメッセージ性が表面に滲み出てきて、逆に評価されることがある。その典型が、宮崎アニメだったり、『サマーウォーズ』だ。

 この『図書館戦争』で抱いた違和感というのは、本来は原作にあるメッセージをもっと前面に引き出すべきなのに、それを無理やり隠すようにしているからだ。アニメでは、キャラクターや物語の展開上、メッセージを隠しても見る者を引き込むことができる。しかし実写は、生身の人間がスクリーンに登場し、政治的、社会的なメッセージも発言している以上、むしろそちらにどうしても目が向いてしまう。だから登場するキャラクターたちは、とても魅力的なのに、映画の中では狂言まわし程度の価値にしか見えてこないのだ。

 実写にしたにもかかわらず、ほぼアニメと同じような演出になったのは、原作者も製作者も、メッセージ性が映画のメインになるのは本意ではない、ということではないかと思う。だったら、アニメのほうにもっと力を入れるべきだつたのでは、というのが私なりの意見である。

こもねこ