「本や映画のせいにするな。」図書館戦争 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
本や映画のせいにするな。
原作はアニメにもなった大人気シリーズということで、
そのタイトルくらいは知っていたが、内容をまったく知らず^^;
で、いきなり今作を観たものだから「へっ!?」って驚いた…。
何これ、自衛隊を描いてる話だったの?
原作読破の友人に、何というか、変わった話だよ!と言われて、
ははぁ~なんて思ってはいたけど、かなりのミリタリーよねぇ。
まぁ全体の半分以上はほぼ戦闘シーンなので(図書館を舞台に)
何で図書規制のことでこれだけ殺し合わなきゃならんの?という
設定そのものを受け容れ観られないと、これはかなり辛いかな。
そしてその戦闘シーンの凄まじさとは対照的に^^;
まぁ~♪なんてオトメちっくな♪初恋物語。が並行して描かれる
ので、何ともいえない不思議な雰囲気に呑まれてしまった。
私的に主人公二人にはまったく思い入れがないので(ゴメンね)
チビ教官とデカい女隊員という感じの凸凹感は面白かったものの、
あれだけ血みどろの闘いを映す一方で、あまりに甘い設定描写に
やや白けてしまう部分も多かった(同じシーンを何度も映すので)
王子様に惹かれて入隊した笠原(榮倉)の奮闘ぶりはいいけれど、
そんな遊び半分(失礼!)の気分で務まるような現場ではないし、
まぁでも彼女がいなかったら、本当にただの自衛隊映画になって
しまうところから、いいのか~あれで^^;と納得したような次第。
有川作品では、今放映中の「空飛ぶ広報室」がかなり面白いけど、
結局本当の戦闘が始まれば、ああいうことになるんだよ…なのね。
そんな中、仁科(石坂)が語る本への思いは胸に響いた。
「こんな世の中を作ってしまったのは私達の責任だ。」
メディアの良化とは何を指すのかと思っていたが、日本は過去に
欧米諸国によって歴史的事実を記した図書を燃やされてしまった。
たかが本。されど真実。
事件が起これば、必ず何かにその責任を着せ、証拠を隠蔽しようと
企むという今も変わらぬ姿勢への疑問、自衛隊は攻撃部隊ではなく、
あくまで自由尊厳を守るために存在しているという事実の周知など、
おそらくは描きたいことが沢山あったのだろうと思う。
柴崎(栗山)の言った台詞には私も同感。
どれほど本や映画にそういった(メディアに反する)描写があったと
しても、それを見た本人が犯罪に手を染めるとは限らない。
むしろそういったメディア総てに規制をかけ、小さな頃から卑猥な
映像も、汚く残虐な描写も、まったく知らずに成長した子供の方が、
よっぽど怖い大人になるんじゃないかと思う。まさに未知との遭遇。
ドラマ部分はまぁまぁとしても、やはり戦闘シーンの意味合いに
納得がいかないと、観ていてただ辛い印象に終わってしまう気が。
武器・銃器を使って意のままに操るという、日本人にはまったく遠い
感覚で描かれる世界だからこそ、衝撃度も大きく、彼ら図書隊への
思い入れも強くなるだろう一方で、メディアを良化し健全な社会を
目指す目的で器物損壊やテロによる殺戮が繰り返される世の中に
生まれてくる子供たちは未来など描けるのか?と首を傾げるばかり。
良い人間を育てよう傍から戦争してどうする。夢もへったくれもない。
(衝撃映像のあとにはホンワカ恋愛物語。緩急のつけ方がスゴイ作品)