「岡田准一のアクションをもっと巧く描いて欲しかった」図書館戦争 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
岡田准一のアクションをもっと巧く描いて欲しかった
本日5月1日、GW真只中、しかも今日は映画が1千円で観られる日ともなれば、流石にシネコンには観客が溢れているのは当然だ
映画好きの私には、久し振りに混雑している映画館で映画が観られるのは嬉しいものだ。
229座席は殆んど満席だった。制服姿の学校帰りの高校生が多数いた。
終映後、学生達の多くは面白いと口々に語っていた。まずまず成功した映画と言えるのだろう。
しかし、私には不満の残る、感動の無い、駄作に感じられた。
自衛隊の全面協力が有ってか、戦闘シーンがリアルな映像で、これまでの邦画界の戦闘シーンにはみられない、珍しく見応えの有る作品として迫力を発揮した。
それは認める。だが、そこにこそ大きな矛盾を感じてしまい、感情移入どころか、感動を微塵も感じられないばかりか、不快な作品となった。
この原作はたとえベストセラーではあっても、決してこんな話は、実写映画向きでは無いと私は考えるのだ。子供向きのコミックや、子供TVのアニメで、全くの架空の話で、有り得ないストーリーをTVで、無料で観させられるのならば、それならば、まだ我慢は出来る。
TVはあくまでも消耗品と言うのが前提である。
しかし映画は一つの芸術作品でもある。劇場に足を運んで通常では1800円の入場料を観客に払って頂いて、観て貰う作品である。
映画を企画する、プロデュサーには、その事を忘れて欲しくは無いのだ。
ベストセラー=ヒット作に成るOR制作費の元が絶対取れる=映画化は可能
こう言った方程式は、他人のお金を何十億も集めて制作するので、回収率を計算する以上は当然だが、回収出来そうならば、制作にGOを出すと言う考えならば、今後の邦画界に未来は無い。
そして70年前の小津安二郎監督が制作した「東京物語」が世界から今なお高い評価を得ているが、小津監督作品を産んだような、後世にも残る名作を作る事は今後の邦画界には出来なくなってしまう。
奇しくも石坂浩二のセリフに「たかが、本だ。これ以上血を流すな」と言う様なニュアンスの発言をさせていた。正にその通りなのだ。言論の自由、宗教、思想の自由は憲法でも保障されている事だ。日本は法治国家であり、自由経済の国家に於いては憲法で保障されている事を守る事は最も大切な事である。それが、もしも脅かされてしまったら大変な事態を招くとの、気持ちからこの作品はマスメディアの重要性、偏りの無い報道の大切さ、自衛隊の専守防衛をテーマに、愚かな戦争を繰り返す事の無い、反戦を訴えた映画と言う事になるのだろう。しかし、言論、思想の自由は平和に生活するためには大切な事柄だろうが、例え話を図書館での、本を読む自由を死守する事で、戦争を起こす話にしてしまっては、余りにも無理難題で、軽薄で、幼稚である。これでは、震災でも一生懸命に働いて下さった自衛隊隊員に対しても失礼だ。警察に対しても失礼だ。
警察も自衛隊隊員も、国民を守る為に、時に自分の身の危険を顧みずに自分の命と引き換えにして働いている人達だ。
私も、映画と本の愛好家である。言論の自由を一番必要としている人間だ。
しかし図書館で本を守るための、防衛隊と自衛隊の戦争話と、それに警察隊達の鬩ぎ合いなど、真平ゴメンだ。こんな事で、お茶を濁さず、自由思想と、平和憲法を守りたいと言うテーマならば、堂々と反戦映画にするべきだ。
本当の戦争の話を描いて欲しい、そしてその中で、反戦を描けばよろしい!
或いは、小津の「東京物語」の様に、戦闘シーンを描く事が無くても立派な反戦を軸にしている作品を作って欲しいものだ。
岡田准一が「SP」では、六本木での車上のアクションシーンが素晴らしかったのに、今回は、格闘シーンも、あれ程巧く効果的には彼の力を発揮させる事が出来ていないのが残念だ。
本当は評価を1にしたいところだが、岡田准一の努力を買って2と言う事にする。こんな酷評をアップ出来るのも言論の自由が認められている今の日本に暮らしていられるからだ。その事に感謝したい。この映画が描く日本にならないよう祈っている。