「酒の量と塩の量。」渾身 KON-SHIN ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
酒の量と塩の量。
相撲にまるで詳しくないし、特に興味があるでもないのだが、
今作はなぜだか予告やチラシの段階で、とても興味を持った。
そもそも隠岐諸島に伝わる20年に一度の古典相撲を知らない。
どういう相撲大会なのか?最高位の正三役大関ってなに?
原作も読んでいないため、すべてが初めてという感じだった。
あともう一つ、今作で主役を射止めた青柳翔も知らなかった…
この男の人、誰?新人?^^;なんて思いながらずっと観ていた。
(相撲をとるような顔してないもので、ちょっとビックリした)
隠岐諸島出身の方や、相撲に詳しい方はかなり観入れるんじゃ
ないだろうか。
物語そのものは家族の絆を描いた平凡な話になっているが、
やはり古典相撲のシーン(後半ほぼ一時間あまり)はかなりの
面白さがある。何しろ、何もかも初めてなので(観ること自体が)
へぇ~。こんな風に準備するのか。こんな風に行われるのか。と
とにかく興味津々。やたら長い(といえば長い)シーンにはなるが、
ここがクライマックスなんだからと、ツボをしっかり押さえてある。
特に驚いたのは、酒の量と、あの塩の量^^;
これは遷宮相撲ということで、島民にとってはお祭りだそうだ。
だから酒もそれだけ飲むし塩だってハンパなく使う。
紅白であのサブちゃんに降った紙吹雪以上!に降り注ぐ塩の嵐、
スクリーンが、土俵が、真白になる光景が凄まじくて呆然とした。
いや~、盛り上がるじゃないか。これこそ勝負の始まりに相応しい。
互いが見合って睨み合うところも迫力満点。掛け声も威勢がいい。
子供の頃よくTVでやっていたお相撲の、本当に面白かった頃の
場内の雰囲気というか、そんなものがうっすらと甦ってきた。
分からないとはいえ、北の海や貴乃花、輪島、若貴の世代や、
ウルフ・寺尾といったイケメン力士^^;には、大変興味があった。
我が家の親世代は、未だに大歓声を上げてNHKを見ている。
本気のぶつかり合いというのは、やはりスポーツの醍醐味である。
相撲を通して心が通い合う島民と主人公。そして家族。
後妻として彼に寄り添い頑張った、多美子の描かれ方も心温まる。
父親として、ひとりの男として、渾身の力を発揮した主人公の
ひたむきな努力には、地味ながら大切なものを教わった気がする。
(熟練の行司や呼出しも素晴らしい。隠岐の海も特別出演してます)