「罪と償いと哀しみ」贖罪 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
罪と償いと哀しみ
元は湊かなえの小説を映像化したWOWOWドラマ。評判の良さから再編集して劇場公開され、海外の映画祭にも出品された。
少女が男に連れ去られ殺された。その場に居た友達4人が犯人の顔を見ていたのにも関わらず、一向に捕まらない。
失意に暮れる少女の母・麻子の憎しみはやがて4人に向けられ、犯人を見つけるか、それ相応の償いをするよう迫る。
15年後、トラウマを背負ったまま成長した4人の前に、麻子が現れる…。
犯人探しより、登場人物たちの辿る数奇な運命に重点が置かれている。
事件の目撃者である4人…紗英、真紀、晶子、由佳。
紗英は事件以来、男性に対して不信感を抱いていた。そんな時、好青年と出会い、結婚するが…。
事件の時に何も出来なかった事に胸を痛める真紀は厳格な小学校教師に。ある時、学校に不審者が現れ…。
事件以降、劣等感を抱える晶子は実家に引きこもり。兄の自分の娘への不可解な言動に…。
由佳は事件の時に親切にしてくれた警官に憧れを抱いていた。姉が警官と結婚した事を知り…。
4人の償い。
その代償としての4人が辿った運命は哀れ過ぎる。
狂わされた4人の運命は本当に償いに値するのか。
4人にそんなトラウマを与えた麻子は残酷だ。
しかし、運命が狂ったのは4人だけではなく、麻子も。
15年後、遂に犯人の手掛かりが。犯人には、麻子のある過去が関与していた。
その過去は麻子にとって罪深いもの。
過去の罪が今の悲劇へ。
最も重い罪の代償を背負ったのは麻子自身なのが哀しい運命。
罪は代償を求める。
代償は哀しみを招く。
哀しみは連鎖し、更なる哀しみへと繋がっていく…。
監督は黒沢清。丹念な描写が光る。
小泉今日子、蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴、森山未來、加瀬亮、香川照之ら豪華アンサンブルが素晴らしい。