「しんゆり映画祭 その2  プロバレリーナへの登竜門とされるユース・...」ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ! La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

しんゆり映画祭 その2  プロバレリーナへの登竜門とされるユース・...

2024年11月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

しんゆり映画祭 その2

 プロバレリーナへの登竜門とされるユース・アメリカ・グランプリに挑む各国の少年少女を追ったドキュメンタリーです。5000人余りの予選から200~300人に絞られる本戦に進むのがまず至難の業で、その中から更なる頂きを目指すのです。様々な背景を負った子供達の「一流のバレリーナになりたい」の真っ直ぐな思いが胸を衝きます。でも一方で、バレーの先生が語るバレリーナの条件「才能・体格・経済力」の現実が立ちはだかります。幾ら才能があったとしても、手足の長さ、身長、筋肉の付き方は如何ともし難く、また、相応のお金がなければ夢を適える事はできないのです。

 本作で取り上げられるどの子も魅力的なのですが、最も目を惹いたのはシエラレオネからの難民としてアメリカに渡った黒人少女のミケーラでした。反政府軍によって両親を殺された過去は彼女の心に深い傷を残したに違いないのですが、アメリカの養父母が本当に愛情深く彼女を応援します。「黒人女性が白鳥の湖を踊る事は可能なのかな?」という思いも僕の脳裏を過ります。また、彼女の筋肉質の体つきは華奢な他の少女とは少し異なって見えるのです。でも、一旦ステージで舞い始めるとその躍動感が凄いのが素人目にも分かります。その彼女が足の故障を押して立った最終選考のステージには胸が熱くなりました。

 この子はこの映画の後どうなったのだろうと、観終えてから調べて驚きました。彼女は本作の戦いの後、バレリーナとしてステップ・アップを重ね、オランダ国立バレエ団のソリストにまでなったのですが、何と、今年の9月に29歳の若さで亡くなったのだそうです。詳細は分かりませんが、何と残酷な運命の仕打ちでしょう。

 そんなこんなも含めて、子供らの夢をストレートに描いた本作は素晴らしい一作でした。

La Strada