劇場公開日 2024年3月1日

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「対話も文章も情報伝達手段である点に変わりはない」舟を編む 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 対話も文章も情報伝達手段である点に変わりはない

2025年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 直接対面で話すのが得意な人、文章で考えを伝えるのが得意な人がいる。対話と文章は別物のように思える。だがその本質は情報伝達手段であり、人間関係を構築するための手段である点に変わりはない。適切な使用場面が異なるだけで、どちらも疎かにすべきではないし、表裏一体のものだ。

 対話によるコミュニケーションが苦手な馬締は、告白を恋文で済ませようとした。それも相手が読めない達筆で。これは相手のことを考えていない不適切な手段だった。だが直接の告白に切り替えたことで、文章と対話のどちらを選択すべきか、適切な手段があることを学んだのだと思う。また、辞書作りは正確な情報伝達を行うのに役立つもので、それを作ることは、ひいては円滑な人間関係を構築するのにつながっていく。だからこそ情熱を注いで作ることに大きな意義がある。そういうことを考えさせられる映画だった。

 映画の構成について言及すると、リアリティが乏しいように思える場面が多々あったのは気になった。邦画特有の芝居がかった台詞回し、主人公馬締のステレオタイプなコミュニケーションが苦手な男の演技、そんな彼を、付き合う相手の選択肢に困らなそうな美人のかぐや(宮崎あおい)が大したエピソードもないのになぜか好きになるという展開が安易に思えるなど、作り物感を感じた点がいまいちだった。そのため、上映当時話題になった映画だったと記憶があるけれど、そこまでの映画には思えなかった。

根岸 圭一
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