「あらためて辞書のありがたみを痛感」舟を編む マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
あらためて辞書のありがたみを痛感
「言葉」は生き物だ。時代とともに言い回しや用法が変化する。新しい表現や略語に加え、テクノロジーから生まれる新語や造語もめまぐるしく誕生する。
常にメモ用紙を持ち歩き、世のなかに溢れる言葉のすべてを掻き集めるような日々を送る編集者の仕事は地味で根気がいる。
はじめ、その単調さと言葉の意味を論理的に分かりやすく解き明かす地道な作業が性に合っているとしか見えなかった馬締だが、言葉を人が意志を伝えるツールとして再認識し、その魅力に取り憑かれていくあたりから、俄然、辞書作りの面白さが伝わってくる。
何十万と集めた語句を整理して辞書の見出し語となる24万語を選択し、その意味が充分読み手に伝わるのかチェックを繰り返す15年の時の流れ。
さらに、ようやく印刷に漕ぎ着けても、その膨大な文字の羅列に誤字脱字がないかチェックする途方もない作業など、これまで辞書を利用しても考えることもなかった大変な労力を知った。
言葉の意味こそ生きた言葉で綴られなければ、その真意が相手に伝わらない。紙媒体がデジタル・データに変わろうとも、文字を組み、言葉を紡むのは人だ。
将来、コンピュータがベストセラー小説を執筆する日が来るかもしれない。けれども、その元となる言葉の応用や組み合わせは、その時代を生きる人によって生まれるものだ。辞書という「舟」を編めるのは人だけだ。
それを天職とした馬締を松田龍平が好演。監修の松本(加藤剛)と互いの真っ直ぐな信念を敬い合う師弟関係も奥が深く、今年の邦画でいちばん見応えのある作品だった。
ちょっと残念なのは難しい顔をしてばかりの宮崎あおい。マジメな馬締と同じ顔をされても面白くない。もっと対照的な雰囲気を作って欲しかった。
ついでだが、香具矢が編集部の人たちに料理を「お通しになります」と言って出すが、いったい何分待ったら皿に盛られたものが「お通し」になるのだろう? 「お通しでございます」と言うのが正しいと思う。
はる様
コメントありがとうございます。
「◯◯になります」ってよく聞きますよね。「こちらがコーヒーになります」とか言われると、もうコーヒーに見えるんだけど、さーてこれからどう変化するのかな?って意地悪くカップを覗きこんだりします。(笑)
仰るとおり、言葉を扱った作品だけに余計気になりました。
映画としては、穏やかな中にも流れがあって好きな作品でした。
私も「言葉」を扱う作品の中に、
「お通しになります」という台詞があることを、
とても残念に思いました。
マスター@だんだんさんのレビューを読み、
全く同じことを感じてらっしゃったので、
嬉しくなり、コメントを残させてもらいました。
私も飲食店で働いており、言葉の使い方にはいまだに四苦八苦しております。
もちろん、新しいアルバイトが入ったら、
「~になります」を使わないように教えるのですが、
つい「~になります」とうちで言えば、
すかさず大将が「何分経ったらなるんや!!!」と
マスター@だんだんさんと同じようなツッコミを入れています。
このこと以外は興味深く、面白い映画で、
とても楽しめましたし、凄くいい時間を過ごせました。
なので、尚更残念に感じてしまいました。
横槍を入れてしまいすみません。
失礼いたします。