劇場公開日 2013年3月15日

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「これぞ“神”編集!!」クラウド アトラス arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0これぞ“神”編集!!

2014年1月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

興奮

知的

観てから読むか?読んでから観るか?はなかなか悩ましい問題だが、これは読んでから観たことで、映画がいかに良く出来ているか、ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクバがいかに良い仕事をしたかが、とても良く理解出来る。
原作は過去→現在→未来→現在→過去とジャンルも舞台となる時代も異なる六つの物語を並べる体裁をとっていたが、ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクバはそれぞれの物語のパズルのピースをバラバラにし、正に換骨奪胎、ひとつの大きな物語として再構築し、際限のない人間の欲望、罪と罰、循環する命、受け継がれていく魂、といったテーマを浮かび上がらせることに成功した。
原作のデヴィッド・ミッチェルがやろうとして上手くいかなかった(と私は思う)ことを三人の監督は見事にやってのけたのだ。
ここまで細かく六つの物語をつなぐことは小説には出来ないことだし、ひとりの俳優が複数のキャラクターを演じることでそこに意味を持たせることも小説には出来ない。
正に映画にしか出来ない方法でこの壮大な物語を作り上げた。これは賞賛に値する。

ただ、一方で、原作を読んでいない人がひとつの物語をもっとじっくり見たかったという感想を持つのも当然だろうし、仕方のないことだと思う。
それは、それぞれの物語がそれ自体で十分成立する完成度の高いものであることの裏返しでもあると思う。

arakazu