「「相棒」らしい社会派テーマとイタミンの活躍に満足!」相棒シリーズ X DAY 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
「相棒」らしい社会派テーマとイタミンの活躍に満足!
「相棒」スピンオフ映画第2弾。
正直、米沢主演のスピンオフ第1弾は、本家のTVスペシャルにも劣るパッとしない出来だったが、何と言っても今回の主役は、我らがイタミン!!
警視庁捜査一課・伊丹憲一。
右京の初代相棒・亀山のライバル刑事で、強面、特命係を疎ましく思い、嫌みばかり言う、いわゆる憎まれ役。
しかし、実は正義感の強い熱血漢。
一本筋が通っている一方、苦虫を噛みしめたような顔が笑いを誘ったり、権力に阻まれて壁にぶち当たる平刑事の哀愁や苦汁を舐めさせられたり、「相棒」を語る上で外せない名物キャラ。憎まれ役だけど、憎めないのだ。
そんな伊丹と“相棒”となるのは、今回初登場となるサイバー犯罪対策課の岩月。(TVシリーズ11シーズンに特別出演はしていたが)
一警察官でありながら自分の管轄以外興味を示さなかった岩月が、伊丹と衝突しながらも触発され、警察官としての責任に目覚めていく姿も見所の一つ。
熱血漢の伊丹とクールな岩月。
亀山が警察を去って喧嘩相手が居なくなり寂しそうだった(?)伊丹も、岩月相手に久々に減らず口を叩き、凸凹なやり取りを見せてくれる。
今回、邪魔な特命係が居ないので(笑)、いつも脇のレギュラーメンバーの視点で話や捜査が進められ、何だか新鮮。
同じ捜査一課の三浦や芹沢、鑑識の米沢は勿論、角田課長は大河内監察官と共に捜査し意表を突く。
総理補佐官・片山雛子の女帝っぷり、上の言いなりになる内村刑事部長と中園参事官、そして本家のアノ人や警察庁に戻った2代目相棒も登場して、ファンをニヤリとさせてくれる。
ネット上にバラ撒かれた謎のデータ。
不正アクセス容疑がかかる銀行員の死。
捜査を進めていく内に、事件の裏に、政界と金融界の陰謀と、金融封鎖計画“XーDAY”が浮かび上がる…。
この骨太な題材こそ、「相棒」の真骨頂。
権力者が極秘裏に事を進め、一般人は何も知らないまま踊らされる。
バラ撒かれた万札に人々が乱舞するシーンはさながら地獄絵図。
そんな中を、走り、真犯人を追う伊丹の姿に正義を信じさせ、熱いものを感じさせてくれる。
が、正義と真実が何時如何なる時も通るとは限らない。
この不条理さもまた「相棒」だ。
一応、これは映画。
エンドクレジットが終わって、どの映画でもお馴染みの“フィクションです”のスーパーが出る。
これは本当にフィクションなのか?…と、つい思わずにはいられなかった。