「ドラマ気分で見ると、手酷い目にあう」夏の終り いずるさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマ気分で見ると、手酷い目にあう
決して、『主人公や内容に共感する』なんて考えを持ってはいけません。
ドラマじゃ、その気分で見てもいいでしょうけど(むしろそれを目的とした主人公作りがなされていますけど)これは非常に特徴的な愛を描いています。そんな甘々な気持ちでいると顔をひっぱたたかれ、そのついでに突き倒され腹部を踏みつけられる目に遭います。
私も後ろからナイフでざっくざくにやられました。あ、綾野剛はかっこよかったです^^
誰に共感するわけでもなく、ただそこで映し出される愛の表現に感心する映画。中々お目にかかれない、愛という免罪符を振りかざした暴力です。映画は非現実を見るもの、という言葉を久しぶりに感じました。『愛は我が儘で、人を振り回すもの』という理念が突き通されているのかな。
「どうにもならないのよ」「どうにかしてよ」と主人公、知子の台詞通り「どうにかしてよ」という愛が描かれています。「どうにかしろよ」って感じでもあります。
終演後の観客の反応は、それは微妙なものでした。トイレで「共感できないわ~、綾野剛の役が一番共感できた」と言っている二人のご婦人方を見かけました。
そりゃそうだよね、という気持ちになりましたが、私の鑑賞後の気持ちは、それだけじゃない、何とか説明を付けたい、という気持ちで。全く面白くない訳じゃなかったし、でも面白いわけでもなかった……と白黒はっきり付けられなかったです。
二カ月たって「愛の理不尽さがわかる映画だったんだなあ」とぼんやり思いました。人生勉強になった映画。
画角はすごくきれい。どのシーンを眺めても満足できそう。
光と影の演出も良くて、うす暗い部屋に落ちる影、窓から差し込む光。
バランスが素晴らしいです。知子が作る反物の模様のような世界。
あと珍しく煙草を嫌がらず全面に押し出している映画なので応援していきたいです。綾野剛が吸っていたのが、Hi-lightでしたっけ?
ちゃんと銘柄の味もわかっていれば、人物の役もわかりそう。