「映像がとても美しくひかりさんの着物姿も美しい」夏の終り Enaさんの映画レビュー(感想・評価)
映像がとても美しくひかりさんの着物姿も美しい
この映画は知子の自立の物語ですね。家族を捨てて年下の男と駆け落ちしてきたもののすぐにうまくいかなくなり、自分を見失っていたところに出会った売れない小説家。お互いに依存しあい、生ぬるい愛人関係を続けるものの、やがて染色家としての仕事も軌道にのり、一人の女性として知子がその関係から自立していく。そんな姿にすがすがしさを感じるのです。
とはいえ長い間「出かける時はバックの中身を整えてくれた」保護者のような愛人との別れはどこか切なくもあり、その切なさが「夏の終わり」というどこか寂しい季節としっくりくるのです。
この映画では夏の終わりに漂う、切ない雰囲気を美しい映像と素晴らしいキャストの演技で見事にその世界観を構成していたと思います。
ひかりさんは知子を演じるには少し若いかな?とおもいつつも、やはりこの人しかいないと思わせる存在感は流石でした。
とにかく着物姿が美しいかったです。
映画の中では「終わり」がクローズアップされていましたが、終わりはまた新しい始まりを予感させます。
そしてそれは、希望でもあります。その希望がどんなものかはっきりはしないものの、確かにそこには光がある、そんな余韻を残して終わります。
人は誰かがそばにいてくれないと生きていけない弱い生き物かもしれません。そして多くの人は愛や家族といった絆は尊いものという幻想のもとに生きています。
確かに、人とのかかわりの中で心は癒されますが、同時に濃密な関係にがんじがらめになると、個としての自分は死んでいきます。
そんな時、自立していくこと、一人で歩く人生にk希望の光を感じるかもしれません。でもその希望の光は真夏明るい太陽のような健全な光ではなく、夏の終わりの、秋にさしかかるやわらかな夕日の光にも似ている、そんな、心地よく、少し切ない感傷的な気持ちになる映画でした。