「盲目的な黒ガラスから抜け出した白ガラス(白セーターを着たヴォイキツァ)」汚れなき祈り niiさんの映画レビュー(感想・評価)
盲目的な黒ガラスから抜け出した白ガラス(白セーターを着たヴォイキツァ)
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冒頭のシーンで、群衆の流れに逆らいながらアリーナを探すヴォイキツァ。そこで待っていてと呼び掛けるヴォイキツァに対して、レールを踏み越えてヴォイキツァを抱きしめるアリーナの姿は、はじめから二人の悲劇的な結末を予感させた。
終盤、「逃げ出して」と鎖を解いたヴォイキツァに、翌朝彼女の顔を見て微笑んだ後、アリーナは息絶える。
冒頭のシーンで二人の強い繋がりを印象付けることで、終盤の展開での切なさが活きてきた。
視覚的には、“口を開けた雛鳥”のような純真さで警察からの質問に答える黒い装束を纏ったシスターたち。それを離れたところから白いセーターを着たヴォイキツァが眺めているという色の対比のシーンが印象的。
また、邦題にて「汚れなき」と題目されてはいるものの、ラストシーンでは神父たちの乘る警察車両に泥が飛び散って終幕した。盲目的な信仰心、集団心理が倫理観を曇らせ、無関心と不寛容が悲劇を増長させるという皮肉にも感じる。
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