「払拭できない細部の作り」変身(2005) R41さんの映画レビュー(感想・評価)
払拭できない細部の作り
あの東野さんの小説の映画化。
小説も読んでいるが、これが小説と当時の実写化の「差」なのだろうか。
基本的なプロット変更はないのだが、主人公への感情移入がしにくい結果となっている。
映画から受ける物語の印象が小説とは異なっているように感じて仕方ない。
この作品ではストーリーが中心となってしまい、主人公が変化を繰り返す自分の思考に葛藤する様子にどうしても違和感が払拭できないのだ。
治療された成瀬は趣味や性格に違和感を感じるが、それを排他的行動で示していることにドナーの性格を被せているが、設定上の矛盾を感じてしまう。
京極の双子の妹の話の通り、彼は臆病でやさしい。「番場に謝って欲しかっただけ」
京極が誤って発射した拳銃で成瀬を撃ち、自殺を図ったときの記憶などがそのまま移植されたのも理解できるが、京極という人物と成瀬の行動が一致しているとは思えない。
女医を殺した理由は、裏切り。依頼したにも拘らず日記を教授に送信したこと。
このことは京極としてではなく成瀬本人としての行動だったように思う。
教授が勝手にした脳移植。素性も何もかも秘匿している。
すべてが謎のままで変化に苦しむ自分。
それが女医へと向けられたのは確かだろう。
移植と記憶については手塚治虫さんの漫画でも描かれているが、ドナーがホストを乗っ取るような物語は確かに面白い。
そこに感じる生前の強い思い。成し得なかった事を遂行しようとする思いがあるのかもしれないと思ってしまう。
女医を好きだった医師の男は、犯人の成瀬を襲うが返り討ちに合う。
喧嘩の強さはドナーの記憶か?
その罪悪感と自分ではないものになってしまったことに対する最終的な復讐が教授の前で自殺することだった。
悲劇として描かれた作品だが、どうしても小説の感じ方になれないのが惜しかった。