劇場公開日 2002年4月20日

「二世、三世政治家、財界人はいらねーな」名探偵コナン ベイカー街の亡霊 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0二世、三世政治家、財界人はいらねーな

2020年5月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 世襲制が敷かれているみたいな現代の日本。嫌味なガキンチョばかりがスニーク・プレビューに参加する。シンドラー社が主催するVR、AIのゲーム界を先取りしたような発表会でも政界、財界、芸能界など有名人の御子息ばかりが招待されていたのだ。しかし、“コクーン”というゲームには2年前に自殺に追い込まれた天才少年ヒロキ・サワダのプログラム“ノアズ・アーク”が侵入していたのだ。

 参加者50人のうち1人でもクリアできれば勝ちとなるのだが、5つのバイキング、パリ・ダカール・ラリー、コロセウム、ソロモン、オールド・タイム・ロンドンは厳しく、脱落者が続出し、ロンドンを選んだコナン達が最後の希望となった。

 ヒロキが日本の学校教育に疑問を抱き、アメリカに渡り、マサチューセッツ工科大大学院に進学、そしてIT業界の帝王と呼ばれるシンドラーのもとで働かされることとなった。個性を伸ばさない教育というものと、決められたレールの上を進むだけの人生など、風刺を込めて描いてある。今までの劇場版と一風変わった展開は脚本家が野沢尚に代わったからだろうか。シリーズの中でも異色ではあるけど、ホームズやジャック・ザ・リッパーを登場させるところは本来のコナンの真髄なのかもしれません。

 また工藤新一=江戸川コナンの父親が推理小説家としてクローズアップされているので、親子の信頼関係もまた世襲制へのアンチテーゼとして訴えてくる。そして殺された樫村も意外なところで繋がっていることが明かされることも・・・

 日本をリセットしてやる!なんて犯人の過激な主張もありますが、それをいい形で展開させているのも社会派作品としての見所のひとつ。さらにシャーロック・ホームズとモリアーティにも敬意を払い、「血は争えない」という主張を最後に持ってくるものの、それを「なぜ戦わなかったんですか?」と詰め寄る工藤優作がカッコいい。それぞれの親子の形があるのだろうけど、工藤親子がやっぱり一番ですね。

kossy