「色褪せることのない、永遠のノスタルジー。」話の話 sophia703さんの映画レビュー(感想・評価)
色褪せることのない、永遠のノスタルジー。
30年以上前、吉祥寺のバウスシアターで初めて観た時から
まるで自分自身の想い出のように、
記憶の片隅に置き去りにされたままの、アニメーション映画。
「話の話」は30分間の美しい映像詩であり
「永遠のノスタルジー」でもあり、
ソビエト時代のロシアが生んだアニメーションのバイブルである。
バッハの調べをBGMに、海を臨む丘に住む家族の日常。
灰色オオカミの子の丸い瞳に映る、眠る赤ン坊と
つぶやきのような子守歌。
古いタンゴを踊る、小さな町の男女。そして戦争…。
雪が降り積もる公園のベンチで、言い争う男女、リンゴを齧る子供。
すべてが不思議に懐かしい。
色味を抑えたセピアのような映像と、静かな音楽、交差する光が
誰かの(つまりはユーリー・ノルシュテイン監督その人の)夢の中に、
観ている私たちが入り込んでしまったような錯覚を抱かせる。
これまでにスクリーンでも何度も観てきたし、DVDも持ってはいても
今回の上映は、2K修復によるデジタルリマスタリング版で
ノイズなどもキレイになり、大画面で見るに堪える美しさとなっている。
映画サイトなどではあまり話題に上らない地味なロードショーではあるが
思いがけず多くの観客で劇場は埋まっており
アニメーションの世界における、ユーリー・ノルシュテイン監督の偉業と
日本における人気の高さを再認識した。
久しぶりに心から堪能した、「永遠の、そして不滅の30分間」。
ありがとう。
※私のアイコンには、何年も前から
お気に入りのこの作品の主役「灰色オオカミの子」を
借用しています。
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