「1990年の日本アニメから見た世界の風景」ARIEL かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
1990年の日本アニメから見た世界の風景
原作は笹本祐一の同名ヤングアダルト小説(ライトノベル)。
監督はわたなべぢゅんいち。
【ストーリー】
銀河を征服せんと版図を広げる銀河帝国の尖兵の下請け企業ゲドー社の航宙戦闘艦アルクスが地球軌道上に現れた。
艦長のハウザーは経営に苦しむ社を救うべく、巨大なモンスター型の降下兵を差し向けてくる。
パニックにおちいる各国。
ターゲットとなったのはバブル景気真っ盛りの日本。
国立科学研究所SCEBAI(スケベイ)の所長岸田博士は、国家からぶん取った予算を好き勝手に使い、趣味で作った巨大女性型ロボット兵器ALIEL(エリアル)を用い、姪と孫娘三人を乗せてウキウキで迎撃する。
姪の大学生の河合美亜を金で釣り、おじいちゃんつ子のハッスル孫娘の岸田和美は前向きに協力させることに成功したものの、和美の姉の絢は融通のきかないタイプかつ受験生で、なかなかエリアルに搭乗してくれない。
岸田博士はなんとか絢をエリアルに搭乗させるべく、あれこれ手を尽くすのだが……。
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以上、ここまでがなんと、この映像作品を見る前提として知っておかねばならない設定です。
無茶するマッドサイエンティストと見目麗しい三人の女の子、そしてそれを乗せるのは死んだばーさん若い頃にそっくりな巨大ロボ。
いい設定だと思います。
みんなも思うよね?
一応メインの主人公として動く、いや巻き込まれるのはそばかすメガネっ娘の絢。
いつもため息ついては自分の不幸を憂う、当時のテンプレ主人公。
これ、原作小説が1話ごとに、当時のアニメやSFのいろんなパターンを踏襲してて、しかも流行り物の取り込み方もおしゃれで会話も当時風で、本当に好きだったんですよ。
自分は、この本でハロッズのキャンディーとか、えらいシャレたアイテムを知りました。
紅茶はリプトンかマリアージュ・フレールが好きです。
どっちも高くて普段は飲めませんが。
1〜2話目は説明不足なファンサービスアニメになってしまってて(だから前提知識がいります)頭に情報が入りにくいんですが、原作者が書き下ろした3〜4話目は完成度の高いパニック物で、日本版ネビュラ賞の星雲賞を獲得してます。
アニメーション自体も、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)ながら腕のいいアニメーターそろえてよく動かしてくれてて、作画ファンならそれだけで満足する出来。
さすがにハードルの高い作品なので、万人にはおすすめしません。
でも、間口の狭ささえ通りすぎればこの『ALIEL』とても楽しいアニメですよ。