「住もうとは思わぬが残って欲しいという我儘」越後奥三面 山に生かされた日々 LaStradaさんの映画レビュー(感想・評価)
住もうとは思わぬが残って欲しいという我儘
ダム建設で湖底に沈むまで、新潟県北東部の朝日連峰麓に昭和末まであった奥三面(おくみおもて)村の人々の暮らしを、そこに住んでまるまる記録したドキュメンタリーです。
この地は雪深い為に、冬季には付近の村との交通が完全に途絶してしまうので、数十戸の村の人々は自然を生かして、或いは自然からの恵みを大切に一年を送ります。稲作は勿論ですが、豊富な山菜や木の実・キノコ、ごっそり捕れる川魚、山で撃った熊などが村の人々を支えます。特に、山のゼンマイは村の現金収入の半分を占める大切な野草で、この収穫時期には子供も学校を休んで山に入ります。小中校もこの季節には10日間の「ゼンマイ休み」になるんですって。農繁期に学校が休校になる土地が昔はあったと聞いた事がありますが、まさか「ゼンマイ休校」とは思いも寄りませんでした。
また、村にはその由来もよく分からない不思議な風習が季節ごとに様々あります。考え様によっては面倒臭いのかも知れませんが、雪深い土地で暮らしていると、こうして新たな季節を迎える事が嬉しくもあるのでしょうね。
若い人はやはり都会の便利さに魅力を感じて村を出て行くのでしょうが、こんな土地で子供時代を過ごした事は、後の生き方に強い影響を及ぼしているに違いありません。日本一緑の少ない大阪の下町で生まれ育った僕が「羨ましい」などと安易には言えませんが、ここに住みたいと願う人がおられる間は残して上げて欲しかったなぁと思うのでした。
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