妻と女記者

劇場公開日:

解説

「青い山脈(1949)」「女の顔」の藤本真澄の製作で、「破戒(1948 木下恵介)」の久板栄二郎のオリヂナル脚本を「女の闘い」の千葉泰樹が監督にあたる。キャメラは「果てしなき情熱」の小原譲治が担当する。主演には「こんな女に誰がした」の伊豆肇「足を洗った男」「影を慕いて」の山根寿子に「花の素顔」の菅井一郎、久方ぶりの瀧花久子「石中先生行状記(1950)」の若山セツ子と池部良の他に新人角梨枝子らがそれぞれ出演する。

1950年製作/92分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1950年4月2日

ストーリー

矢代宏司は復員したばかりなので大学の研究室に通って、彼の専攻の医学をみっちり勉強し始めた。彼には妻の孝子と息子の英司がいたが、戦争で焼け出された宏司の実父と実母が同じ鎌倉の家に同居していた。しかしその家は宏司たちが結婚する時に、今は亡き孝子の両親からもらい受けた家であった。この家族達は宏司が復員して帰えってくると家計の苦しみをかくして、何にくれとなく今までの宏司の苦労をねぎらってやるのであった。宏司の父健蔵は日本画家であったが、いたって開けた知識の持主で、芸術家にありがちな、金銭的には貧しかった。彼の妻の朝子も円満な性格の人で、二人とも嫁の孝子を吾が娘の様に可愛がり頼よりにしていた、宏司が長い間戦地に行っている間、事実孝子は宏司の両親をかかえて一家を支えてきたのである。しかし孝子は宏司が復員して帰えっても、良人の世話と、両親の世話の区別なく良く面倒をみてやっていた、一方宏司は同僚の吉崎が抑留所で死亡したので、妹の文枝を尋ねることを依頼されていた。偶然グラフ雑誌“サンシャイン”をみて、彼女の名前を発見して直ちに尋ねた。処が文枝は現在家に困っていると聞き、宏司は独断で彼女を吾が家の二階に下宿させた、復員以来常に何にかにつけて気難しく、家族達を困らせていた彼は、吉崎文枝が彼の家に下宿してからというものは、がらりと気が変った。生活も良くなり、毎日楽しく研究室に通うようになった。この心境に人知れず悩む孝子は、自分の非を改め良人に気に入られる様にと努力を惜しまなかった。母の朝子も孝子の苦しみを、息子の吾がままだと言って、それとなくかばっていた。文枝は相変らずの楽天家で、この家族の恩恵を感謝しながら、同じ編集員の梶本良平の耐えざる求婚を考えてみるともなしに考えていた。そのころ宏司は、現在の生活を清算しようと考え、また家族の暖い宏司に対する気持ちも逆作用して、家族からますます彼の心は離れて行った、そして彼はいつしか吉崎文枝を愛する様になっていた。この愛情の危機を知った父の健蔵は、吾々にも責任があるといって、文枝に宏司から離れてくれと直接話しをした処、文枝は全然宏司との間を否定して、鎌倉の家に来なくなった。これを知った宏司は一時逆上して怒ってはみたものの、よく考えてみると両親の理解ある解決方法を知り再び妻の美しい姿を目前に見つけ出した。彼等は改めて奈良に新婚旅行に出発していった。文枝も機、熟して良平との結婚を承だくすることに決心していた。始めから良平を愛していたからである。

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