劇場公開日 1949年10月16日

「後半の踏切から、洋画になった」痴人の愛(1949) talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5後半の踏切から、洋画になった

2021年2月22日
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鑑賞方法:映画館

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谷崎の作品で一番好きなのは『細雪』で、あとはちょっと異世界。痴人の愛もそう。原石見つけて自分好みに育てて磨いて愛でたい、というのは光源氏からの伝統なんでしょうか?財力の他に、自分自身にもセンスと教養と魅力がないとむずかしいだろうなあ。でも、この映画では二人が確信犯的に二人だけの世界を作り上げていて、他人はスパイスなんだろうと思った。

ナオミが追い出されてから二回、踏切の場面があって、その一回目から映画の空気が洋画になったようだった。「哀愁」のビビアン・リーみたいな。ひとりぼっちで雨に濡れてストッキングはびりびりの京マチ子。

この映画でも、京マチ子の鬼の形相が良かった。決して「パパ」には向けない顔で、悪い男友達に向けている。パパとの絶対世界とは相容れない、世俗的で社会通念まみれの世界に向けた般若顔。京マチ子は25歳、若さがピチピチしていた。

talisman